築地魚市場・京橋區築地四丁目海軍技術研究所跡に移轉開業
【東京市商工要覧】昭和5年

【東京市商工要覧】昭和5年
 昭和五年三月 東京市商工課
3. 築地魚市場 p106-107/160
大正十二年九月一日の大震火災で、
江戸名物の一つに數へられてゐた
魚河岸(日本橋魚市場〕は全燒した。
そこで一時芝區芝浦二丁目に
天幕張とバラック店舗にて
臨時魚市場を開設したが、
其の不便言はんかたなく
遂に同年十二月一日
京橋區築地四丁目海軍技術研究所跡に移轉開業し、
東京魚市場組合員(昭和三年度末一、二九四名)たる
問屋、仲買、及各種附屬業者は
直接市の監督の下に營業を續け今日に及んでゐる。

本市場の設備に就て述べれば、
其の使用敷地は現在約二千五百七坪にして、
隅田河口に臨み海陸の運輸至便なる地にある。

建物構造は、
震災直後適當なる材料乏しき時
建設せられたる關係上、
總て亞鉛板葺、裏板張の木造バラックである。
但し冷藏庫及氷販賣所は防熱装置とし、
場内一圓混凝土を以って舗装してある。
其他各營業者店舗、待合所、附屬商店舗、
食堂、荷捌場、營業用計算所、鹽乾魚倉庫、
銀行、郵便局、巡査派出所、市及組合事務所等
合計八十二棟を有し、
更に蝟集する漁船の爲に七箇、
買客の爲に一箇の木造棧橋を備へ、
以って取引の便益に供してゐる。
 ―略―
本市場の監理に關しては、
本市は場内に事務所を設置し、
市設卸賣市場使用條例及び
同施工細則等に基いて
場長以下市場管理竝に營業者たる
東京魚市場組合員の取締の任に當ってゐる。
卽ち場内の整理、
發生事故の處理を爲す外、
衞生設備には特に留意して、
閉市場後場内を全部洗滌し、
尚下水溝河岸に消毒防臭藥を撒布する等
淸潔の保持に努めてゐる。
 ―略―
 ―略―
大正十三年七月以來、
冷藏庫を直營して魚介の冷藏保管を取扱ひ、
營業者の利益に資してゐる。
機械は二十噸壓縮機で
アンモニア直接膨脹式を用ひ、
百八十噸の収容能力を有して、
昭和三年度は總計九千八十餘噸の入庫數量を示してゐる。
別に十噸機を以って毎日十噸の製氷販賣を爲しつゝある。
 ―略―
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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