[事業概觀]一、戰爭と放送
【ラジオ年鑑. 昭和22年版】日本放送協會
【ラジオ年鑑. 昭和22年版】日本放送協會
【ラジオ年鑑. 昭和22年版】
[事業摡觀] p7-15/135
[事業概觀]※正誤表(p2/135)にあり
一、戰爭と放送 p7-8/135
日本の放送は常に政府の代辯機關として存在し、
かつて政治的批判、
言論の自由の認められた事はなかつたが、
「滿洲事變」以來、
外部から加へられた重壓は、
放送は國策に順應し、
これを推進させるものでなければ
ならぬといふ聲であつた。
特に「日華事變」以來
放送が廣い視野と幅のある思想を持つことは
全く不可能となつた。
太平洋戰爭の勃發は、
かうした
わが放送の性格を否應なしに
軍と政府の御用機關として規定した。
昭和十六年十二月八日の夜、
情報局のスポークスマンは
「ラジオの前に御集り下さい」と述べて、
放送を通じて
國民の執るべき態度と進むべき道を
指示すると強調した。
この日から放送は全く
軍と政府の發表事項を
傳達するためのものとなり、
放送の内容は其の枠内に於てのみ
活用される事となつた。
放送番組の編成會議は
戰爭勃發直後は毎日、
しばらくして隔日、
やがて一週間に一回づつ開かれたが、
すべての審議は情報局の放送擔當官の出席と
その指導の下に行はれた。
軍と政府の意圖は情報局を通じて
放送を自由に動かしたのであるが、
放送指導の理論が
ナチス・ドイツの放送政策をそのまゝ
受け入れた事が大きな特徴であつた。
このため最も重要な番組は、
東條首相の演説であり、
東條首相に連なる一連の軍、
官首腦者の放送であつた。
そして
衣、食、住の日常生活の些細な點まで、
劃一的に、
軍國主義的に干渉せずには
おかない放送となつた。
戰爭中の放送が國民の士氣昂揚のために
果たした役割は大きい。
しかしその反面、
放送は傳へるべき事を傳へず、
語るべきことを語らず、
國民に何等の眞相をも明かにし得ず、
正しい見透しをもたらすことが出來なかつた。
放送自體が全く目かくしうぃされて居り、
從つて國民は全くの聾となつた。
原子爆彈を新型爆彈と稱し、
白いものをまとつてゐれば
大丈夫だと發表した軍の報
道は、軍の戰法と常識と、
國民に對する態度を最も明白に物語るものであらう。
戰爭中の放送に宣傳はあつたが、
正しい意味での報道は全く許されなかつた。
第一に、
戰況の一方的推しつけと、
必勝の信念、
八紘一宇の相言葉が氾濫する反面、
戰況に關する科學的檢討は
全く許されなかつた。
指導者は、
眞相を明かにし得る程、
國民を信頼してゐなかつたのである。
第二に
諸外國の言説の勝手なる歪曲である。
巖重な檢閲を經て發表される
外國電報はそれでもまだ戰況や諸情勢を傳へて
冷靜な判断と批判を持たうとする者に對し、
多少の參考とすべきものを含んでゐたが、
それすらも、
國民の前に提示される時は、
都合の良い部分だけが抽出され、
宣伝傳のそれに供されてゐた。
國民は指導者から敵國民の如き扱ひを
受ける結果となつた。
ポツダム宣言の受諾は當然
日本の指導層を混亂に陥れた。
平和への希求が世界の大勢となり、
戰爭繼續の不可能とポツダム宣言の受諾のみが
日本を救ふ道であると決定した時も、
一部のものは抗戰を主張し、
全國民を敵彈にさらそうとした。
昭和二十年八月十一日
國體護持に關する情報局總裁の談話と同時に
「全國民斃れるまで抗戰せん」
との陸軍大臣の聲明が出た。
當日午後七時のニユース放送に於て、
この陸軍大臣の聲明の前と後に
陸軍行進曲を演奏せよと、
軍關係者は政府の意向を無視して、
放送局に強要した。
戰爭中の放送の實相は、
この強要が最も明かに示してゐる。
これを最後の陸軍マーチとして、
民衆は軍國主義の強壓から解放され、
わが放送も戰爭と絶緣する事が出來たのである。
凡 例 p123/135
一、本年鑑は昭和十七年四月より
昭和二十一年三月までの四ケ年間における
放送事業の推移を集錄したものである。
一、紙數の關係上取材は重點的に、
記述は簡易を旨としたが、
特に集錄の重點を太平洋戰爭後に置いた。
一、要覽の部はなるべく新資料によるため
昭和二十二年六月一日現在で集錄した。
一、新假名遣、漢字制限以前に執筆したので
新しい方式に依らなかつた。
〔奥付〕 p123/135
昭和二十二年 ラジオ年鑑
昭和二十二年八月二十日印刷
昭和二十二年九月 一日發行
定價 七〇圓
編輯者 社團法人 日本放送協會
榮谷平八郎
東京都千代田區内幸町二ノ二ノ二
發行者 日本放送出版協會
奥屋熊郎
東京都中央區日本橋馬喰町二ノ一
印刷者 株式會社 細川活版所
東京都中央區銀座西六ノ二
發行所 日本放送出版協會
東京都中央區日本橋馬喰町二ノ一
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1124907/123
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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