【朝鮮公論 1(1);4月號】大正2年(1913-04)
出版者 朝鮮公論社
出版年月日 1913-04
朝鮮公論 第一巻 第一号
https://dl.ndl.go.jp/pid/11186870/1/1
朝鮮留學生の寄宿舎を訪ふ
一記者
子弟を手放して遊學させて居る父兄は、
必ず其の子弟の動靜を知りたい筈のものだ。
内地に住居する父兄は之れが便宜を
新聞、雜誌其の他の機關に依て得ることが出來るが、
朝鮮人にして其の子弟を東京に遊學させて居る父兄は
之れが動靜を知るに地は遠く、
之れと云ふ機關もなく新聞、雜誌等に於ても
余り注意されて居ない、
特には文運の進歩は朝鮮の敎育界を促進して
年々子弟を東京に遊學せしむる數が
增加する有樣であるから、
之れが動靜を報ずる爲めに一日、
麴町區中六番町なる朝鮮留學生寄宿舎を訪ねた。
同舎は昨年六月
元の朝鮮公使館の屋敷に建設せられたもので、
公使館の建物はその儘
留學生總監督部に充てられて居る。
門を潜ぐつて直ぐ門衞を右に見、
五六間行くと寄宿舎の玄關になる。
受附へ名刺を出して暫らく待つ間もなく
此方へと導かるゝ儘に、
中庭に出て舎の後方に當る
監督部の玄關に立つた。
玄關の正面に大きな姿見附の帽子掛がある。
其處へ帽子を掛け自分の姿を鳥渡(ちょっと)見て、
直ぐ左の闥(とびら)を開けて應接所へ這入つた。
待つこと凡そ二三分、
赭顔(あからがほ)肥滿(ひまん)の
軍人あがりに見える監督が見えた。
貰つた名刺によると正六位勳五等
荒木捨作君である。
應接所には卓子が一個、
其の周圍に五六脚のさまざまな椅子、
卓上には寒竹の盆栽、
部屋の隅に高麗燒の二尺ばかりの花瓶
其の他には何にもない。
床には絨氈が敷いてある。
荒木君の説明によると公使が引揚げる際、
家具の總(すべ)てを
https://dl.ndl.go.jp/pid/11186870/1/101
持つて歸つたから何にもないのだと。
現在内地に居る留學生の總數が五五四名、
内、東京に四八〇名、
其の他は各地方に散在して居る。
此の寄宿舎には七一名居る。※七一名⇒一七名
官費生は總て十九名であるが内、
農科大學生の七名は學校所在地の都合上、
下宿を許してある。
寄宿生の姓名並に年齢、
所屬學校出身地等を誌せば
◎帝國大學附屬醫院内科研究
金 溶 採(二三歳) 京城出身
金 敎 昌(二七歳) 同上
高等師範學校
金 亨 培(二五歳) 京城出身
鄭 大 鉉(二五歳) 同上
高等商業學校
具 滋 旭(二七歳) 京城出身
尹 皡 炳(二二歳) 同上
兪 班 兼(二四歳) 同上
全 錫 弘(二七歳) 同上
金 敎 哲(二一歳) 同上
高等工業學校
尹 台 爕(二三歳) 京城出身
金 正 敏(二二歳) 同上
權 寧 求(三〇歳) 京北出身
尹 日 重(二三歳) 京城出身
慈惠院醫學專門學校
鄭 世 胤(三一歳) 平南出身
明治大學
南 相 璿(二五歳) 京城出身
府立工藝學校
李 健 植(二〇歳) 京城出身
中央工藝學校
金 承 烈(三〇歳) 京畿出身
留學生は專ら兩斑、儒生の階級に屬する
子弟であるそうである。
朝鮮では内地へ留學するには
總て總督府の許可を得なければならぬのであるが、
靑年客氣の靑雲に憧憬して、
土地に相當な機關があるにも拘らず、
唯だ内地の學校へ行きたさに逃げて來る者も尠くない。
無論、寄宿舎生となるのには
之れ等は其の資格がなく、
一定の手届を經た身許確實なものに限るのである。
白狀すれば寄宿舎生以外の學生の動靜は
未だ詳にして居らぬ併(しか)し、
一般に法律、政治、經濟などに志す學生が多いが、
近頃では實業、工業などを學ぶ者の增加する傾向がある。
是れ賀すべき傾向である。
寄宿生は總じて勉強する方である。
各學校に於ける成蹟も中の部を占めて居る。
-略-
舎監さんの名は中村照臣君、
長軀、肥滿、夏髭吊目、
君も同じく軍人あがりらしい物腰。
-略-
https://dl.ndl.go.jp/pid/11186870/1/102
大正二年三月二十九日 印刷納本 第一巻第一號
大正二年四月 一 日 發 行
編輯兼 若林姫路
發行人 東京市牛込區喜久井町十九番地
印刷人 武井万二
東京市小石川區小日向臺町三ノ七七番地
印刷所 日本印刷株式會社
東京市神田區三崎町三丁目一番地
電話本局一八四〇・一八九八
發行所 朝鮮公論社
東京市京橋區加賀町二番地
電話新橋二四〇五番
總支社 朝鮮公論總支社
京城旭町二丁目
電話一〇七〇番
朝鮮大賣捌所
-略-
https://dl.ndl.go.jp/pid/11186870/1/152
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