[072]〔岩崎革也君〕p097-098[現代船井郡人物史]
【現代船井郡人物史】p57-58/157
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/910636/57
[072] 〔岩崎革也君〕p097-098
須知銀行頭取
船井郡須知町
氏は舊名を茂三郎と云ひしが
明治三十四年感ずる所ありて
革也と改名せり、
資産は小作米四百石
外に銀行其他株券を合して拾四五萬ならんも、
外觀は貳拾萬圓と敬稱せり、
而し此の資産は氏が儲産にあらずして
亡父藤三郎氏の賜たるなり、
藤三郎氏は同郡新庄村字野條の生にて
松本を姓とせしが
明治初年酒屋杜氏として須知に來り
時の酒造家岩崎家に雇はれたるものにて、
岩崎家は同町の名家にて昔時は
須知の岩崎か
岩崎の須知かと
稱せられだれども
其當時は非常に冷落して
酒造業も繼續覺束なしと云ふの有樣なりしを、
藤三郎氏が引受けて、之れを繼承し遂には
岩崎姓を名乗るに至りたるものにて
近年岩崎家に家督相續事件の起りしも之れが爲めなり、
兎に角前代藤三郎氏は勤勉の人にて
酒は自分で造る傍ら金貸を以て大に利殖を圖り、
當時騒がしかりし勤王家に出入して
公債を當にドシドシ貸付けると云ふ有樣にて
非常に金を拵へ
曩きの岩崎家をも凌駕するに至り
一代に今日の資産を爲したる大成功者たるなり、
氏は其守産者にて藁の上へからの坊稚育ちなれども
普通學は勿論
漢籍をも修めて讀書家として稱せられ
長ずるに及び才智縱横、頭脳明晰にし
辯論亦確なる爲め
忽ち名聲を博し
擧げられて町長となりたること二回、
町會議員となり、郡會議員となり
郡參事會員となる等
名譽職の數々に歷任し
遂には代議士候補者たるに及びたるが
中途にして旗を巻きたるが如き思志薄弱、
冷熱秋天の如くなるを惜むべし、
斯る有樣なれば清濁併呑の雅量に乏しき感あり
之れ君が短所として修養を要する所なり、
殊に先年
幸徳秋水一派の社会主義者と同視せられ
警察の視察は善惡の別なく君に集中し
君をして窮地に陥入れたる感あらしめたるは同情に堪へず、
今や須知銀行頭取と云ふ大責任を荷ひ
地方經濟界の重鎭として他を顧みず奮闘せり、
君は手腕卓越、資産豐にして
他の羨む處なれども、
家庭に風波絶へざるは遺憾なり、
されど今や嗣子平造氏
早稲田大學を卒へ鄕にありて家事を助く、
岩崎家は鬼に金棒、
益々隆盛を期待すべきなり、
君幸に安じて可なり。
大正五年九月二十日印刷
大正五年九月二十五日発行
編輯兼発行人 藤本 薫
京都府天田郡福知山町字岡ノ九番地ノ拾五
印刷人 中西勝太郎
京都市下立売小川東入西大路町十番戸
印刷所 中西印刷合名会社
京都市下立売小川東入西大路町十番戸
発行所 三丹新報社
京都府天田郡福知山町字岡ノ九番地ノ拾五
〔 〕『国立国会図書館サーチ』より
【現代船井郡人物史】p57-58/157
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/910636/57
[072] 〔岩崎革也君〕p097-098
須知銀行頭取
船井郡須知町
氏は舊名を茂三郎と云ひしが
明治三十四年感ずる所ありて
革也と改名せり、
資産は小作米四百石
外に銀行其他株券を合して拾四五萬ならんも、
外觀は貳拾萬圓と敬稱せり、
而し此の資産は氏が儲産にあらずして
亡父藤三郎氏の賜たるなり、
藤三郎氏は同郡新庄村字野條の生にて
松本を姓とせしが
明治初年酒屋杜氏として須知に來り
時の酒造家岩崎家に雇はれたるものにて、
岩崎家は同町の名家にて昔時は
須知の岩崎か
岩崎の須知かと
稱せられだれども
其當時は非常に冷落して
酒造業も繼續覺束なしと云ふの有樣なりしを、
藤三郎氏が引受けて、之れを繼承し遂には
岩崎姓を名乗るに至りたるものにて
近年岩崎家に家督相續事件の起りしも之れが爲めなり、
兎に角前代藤三郎氏は勤勉の人にて
酒は自分で造る傍ら金貸を以て大に利殖を圖り、
當時騒がしかりし勤王家に出入して
公債を當にドシドシ貸付けると云ふ有樣にて
非常に金を拵へ
曩きの岩崎家をも凌駕するに至り
一代に今日の資産を爲したる大成功者たるなり、
氏は其守産者にて藁の上へからの坊稚育ちなれども
普通學は勿論
漢籍をも修めて讀書家として稱せられ
長ずるに及び才智縱横、頭脳明晰にし
辯論亦確なる爲め
忽ち名聲を博し
擧げられて町長となりたること二回、
町會議員となり、郡會議員となり
郡參事會員となる等
名譽職の數々に歷任し
遂には代議士候補者たるに及びたるが
中途にして旗を巻きたるが如き思志薄弱、
冷熱秋天の如くなるを惜むべし、
斯る有樣なれば清濁併呑の雅量に乏しき感あり
之れ君が短所として修養を要する所なり、
殊に先年
幸徳秋水一派の社会主義者と同視せられ
警察の視察は善惡の別なく君に集中し
君をして窮地に陥入れたる感あらしめたるは同情に堪へず、
今や須知銀行頭取と云ふ大責任を荷ひ
地方經濟界の重鎭として他を顧みず奮闘せり、
君は手腕卓越、資産豐にして
他の羨む處なれども、
家庭に風波絶へざるは遺憾なり、
されど今や嗣子平造氏
早稲田大學を卒へ鄕にありて家事を助く、
岩崎家は鬼に金棒、
益々隆盛を期待すべきなり、
君幸に安じて可なり。
大正五年九月二十日印刷
大正五年九月二十五日発行
編輯兼発行人 藤本 薫
京都府天田郡福知山町字岡ノ九番地ノ拾五
印刷人 中西勝太郎
京都市下立売小川東入西大路町十番戸
印刷所 中西印刷合名会社
京都市下立売小川東入西大路町十番戸
発行所 三丹新報社
京都府天田郡福知山町字岡ノ九番地ノ拾五
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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〔岩崎革也〕
http://iss.ndl.go.jp/books?any=%E5%B2%A9%E5%B4%8E%E9%9D%A9%E4%B9%9F&op_id=1&ar=4e1f〔 〕『国立国会図書館サーチ』より
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