妓生の話・夜の京城・京城の花柳界【京城案内 : 近郊、温泉】昭和10年
【京城案内 : 近郊、温泉】昭和10年
妓生の話 p18/22
妓生はもと官妓と云つて位を有し
宮中の宴席や兩班(ヤンバン)の酒席に侍べり
鎌倉時代の白拍子に似たものである。
今日では一般民衆の宴席に侍して
歌も唄へばダンスもやる。
妓生の大半は内地語をよくし
流暢なものも少なくない。
中には磯節や安來節を上手にやるものがある。
妓生は長皷(チヤング)と云ふ
太皷を叩いて宴席の興を添え、
妓生が歌ふアリランは世界的に有名な歌である。
詩歌や書畫をよくする妓生があつて
白扇に染筆して貰ふとよいお土産になる。
妓生の本場は妓生學校で有名な平壤であるが
京城には約六百名の妓生が居る。
〔写真〕金月色(京城妓生)
夜の京城 p19/22
夕食をすまして旅館にゴロゴロして居る程
つまらないものはない。
散歩をされるなら本町(ホンマチ)通りか
鍾路通りを漫歩して土産物屋を素見かすのもよい。
南山公園か漢江にドライブして見るのもよい。
娯樂施設としては劇場と映畫館とベビーゴルフがある。
朝鮮料理屋へ行つて
妓生と妓生の舞を見るのも一興である。
京城一流のカフエーは明治町に丸ビル會館あり
アメリカ式の設備とサービスを以て名高く
美貌の女給が旅愁を慰めて呉れる。
長谷川町の花月食堂(公會堂地下階)では
洗練された女給がサービスをして居る。
ローカル・アトラクシヨンとして名物の妓生がある。
妓生は朝鮮料理屋でも日本の料理屋でも呼ぶ事ができる。
尤も一流の妓生は三四日前から約束して置かないと
仲々見られない。
獵奇的方面ではカルボと云ふのがある。
カルボは朝鮮の賣笑婦で、
京城は新町・並木町・彌生町方面に集團して居る。
京城の治安は確保されて居るから
夜の外出は安全である。
京城の花柳界
京城の花柳界は南山町と旭町方面に
一流の日本料理屋があり
新町に遊廓がある。
京城には内地の如く待合がない。
内地の藝妓は本券番・東券番を合せて
約四百名ほど居る。
廣島縣・福岡縣・長崎縣・等
中國九州方面の女が多い。
藝妓の踊りは若柳流を汲み
長唄・淸元・常磐津等の名取りも少なくない。
春秋二季に溫習會がある。
新町遊廓の妓樓は近代的のホールを施設し
美妓が出てサービスをして呉れる。
新町の望月には朝鮮の女が澤山居る。
朝鮮人蔘
―略―
京城觀光協會指定(信用ある店)(イロハ順)p20/22
券番 (藝妓)東 券番。本 券番
(妓生)朝鮮券番。漢城券番
昭和十年七月二十九日印刷
昭和十年七月 一 日發行
(非賣品)
著作兼 京城府蓮建洞三〇二番地
發行者 毛利元良
印刷者 京城府蓬萊町三ノ六二番地
眞山一治
印刷所 京城府蓬萊町三ノ六二番地
朝鮮印刷株式會社
發行所 京城府太平通一丁目三一番地
京城觀光協會
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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