西山幸輝 壮士肌の黒幕的行動派⑥政財界の裏面で暗躍
[日本の右翼]猪野健治著 昭和48年

日本の右翼 その系譜と展望 猪野健治
日新報道出版部
[日本の右翼]表紙
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 西山幸輝
 壮士肌の黒幕的行動派 p118-134
[日本の右翼]西山幸輝
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政財界の裏面で暗躍 p128-131
昭和四十一年(1966)、
自民党は、重政誠之元農相(旧河野派)を
政調会長に据えることを内定、
新聞にもその旨報道されたが、
土壇場になって、
中間派の赤城宗徳がかわって就任した。

西山は重政追い落としの影で動いた一人であった。
西山は、重政と共和製糖の菅貞人との黒い関係を
早くからキャッチしていた。

重政が農相時代、記者連が、大臣室をのぞくと、
重政のかわりに菅貞人が大臣椅子に座っている
ということがままあったのである。

当時、砂糖業界は過当競争下にあり、
「原料高の製品安」現象に、
各メーカーは、大幅な赤字を出していた。

そこで糖価の安定をはかる目的で、
政府出資の事業団ができた。

事業団の恩恵を受けるのはメーカーである。
大手十七社に対抗して、
中小八十社をひきいる菅貞人は、
重政農相に、「政治献金」することによって、
巧みに「補助金食い」をやった。

鹿児島県、同経済連と共和製糖が合弁でつくった
南国製糖もその一つで、
「国産ビート糖生産」のうたい文句もどこへやら、
わずか一年三カ月でつぶし、
宮崎にも同様の合弁会社をつくり、
これまた行き詰まった。

一カ所だけならともかく、
こうなると明らかに「補助金食い」である。

菅と重政の「クサイ関係」はやがては、
表面化せずにはいない。
その重政が党三役(政調会長)に入るのは、
自民党にはマイナスだ。

西山は、三浦義一に相談をもち込む。
重政の対抗馬には、
三木派から早川崇が立つことになったが、
「早川が立つならおれも立つ」
と言って重政はおりなかった。

とどのつまりが、
中間派の赤城宗徳におちついたわけであった。

それから三カ月後に、共和製糖事件が発覚した。
重政が政調会長になっていたら問題は、
もっと大きくなったに違いない。

西山は、ホテル・ニュージャパン問題でも調停に動いている。
ニュージャパンは、
斜陽の一途をたどる藤山コンツェルンの
最後のトリデといわれた会社だ(が、)
[日本の右翼]p128-129
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(最後のトリデといわれた会社だ)が、
豪華ホテルのあいつぐオープンで、経営不振をつづけ、
つもった借金が五十四億円、
赤字が四億円に達した。
対する売上げは、約十八億円(四十年の段階)、
金利と償却費だけに売上げの三分の一強を食われていた。

藤山勝彦は、重役の一人、永田雅一に相談をもちかけ、
永田経由で植村経団連会長(当時は副会長)に話が持ち込まれた。
そこへ、中央土地の勝田国夫(韓国名=朴竜九)社長から、
「肩がわりしたい」と話があり、
おりから日韓問題が解決に近づいていたときだったので、
植村会長がなかに入って、
「日韓財界のかけ橋に」ということで、
藤山の持株を中央土地が引きとり、
再建にあたることで話しあいがつき、
勝田新社長が誕生した。

ところが、やがて難問がもちあがる。
経営はパブリック・スペースの拡大や
大小宴会の誘致で上むくが、
勝田側が再建資金を出ししぶったことから、
藤山側との間にトラブルが生じたのである。

藤山は永田経由で、児玉誉士夫氏に調停役を依頼した。
これを受けた、西山は、
ホテル業界制覇に意欲を燃やす、
国際興業の小佐野会長に
「藤山―勝田双方が身を引く」条件で、話を持ち込んだ。
が、調印前夜になって、
勝田側が難色を示し、国際興業は手を引いた。

一時は、この問題にからんで
在日韓国人グループ数百人が動く気配もあったが、
経営の実権は、一応藤山側の手にもどった。

公称六百七十万人の信徒を持つ
真宗本願寺の内紛では、
児玉誉士夫氏とともに大谷光紹新門側につき、
多数派だった革新派(?)の
訓覇信雄宗務総長の追い落としに一役買った。
しかし、この紛争は、なお尾を引いており、
全面的な解決はついていない。

八幡・富士合併の「影の部分」といわれた
松庫商店事件でも、
西山は、「調停役」の一人として登場する。

松庫事件は、
八幡製鉄のクズ鉄部門といわれた同社が行き詰まり、
稲山嘉寛 元八幡社長の従弟にあたる山根一郎が、
融資と引きかえに、松庫にのり込んだときにはじまる。
実権を一切奪われ
ていよく叩き出された松庫の桑原用二郎前社長は、
児玉誉士夫氏らに調停を依頼、
西山は桑原のもっている大量の長崎日報および松庫株を
八幡が七千万円で引きとることで話をまとめた。
[日本の右翼]p130-131
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