西山幸輝 壮士肌の黒幕的行動派⑦運動資金の問題点
[日本の右翼]猪野健治著 昭和48年

日本の右翼 その系譜と展望 猪野健治
日新報道出版部
[日本の右翼]表紙
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 西山幸輝
 壮士肌の黒幕的行動派 p118-134
[日本の右翼]西山幸輝
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運動資金の問題点 p131-133
西山幸輝の、
こうした政財界の裏側での動きに対する批判は、
もちろん右翼の内部にもある。

が、逆説的にいうならば、
待合政治に象徴される日本の政財界の体質は、
ビジネス以前に「専門的な第三者」の「仲介」または、
「調停」をもってしか解決できない問題を、
政局の推(移の過程、)
[日本の右翼]p130-131
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(政局の推)移の過程、
あるいは企業の内側にあまりにも多くかかえている
――ということの結果でしかない。

大衆的な基盤を持たない右翼は、名目はどうであれ、
政財界からなんらかのかたちで、
資金をあおがざるを得ない。

政財界との資金上の因果関係は、
右翼の政財界に対する批判や行動をにぶらせる。
たとえば公害問題については、
「左翼の宣伝にのるな」と主張する。

水俣病に例をとるなら、
あの運動は、イデオロギーとはなんの関係もない。
チッソ(株)のたれ流す廃液でからだを犯され、
片輪になり、あるいは死んでいった
地元住民の怨念を原点として広がった運動である。

いまも、この本質はかわらない。
「左翼の宣伝にのるな」という前に、
右翼がこの運動の先頭に立てばよいのだ。

現実の政治に不満をもつ一般民衆は、
そうした右翼にそっぽを向く。
かくて、一般民衆と右翼との意識上のズレは、増幅され、
運動は民衆のなかへは定着せず、
浮きあがって孤立化する。

三島由紀夫が既成右翼に絶望し、
ほんの二、三人を除いては
交流を持たなかったのもその故である。

右翼が純粋に右翼であろうとするならば、
政財界筋からの資金にたよらず、
「会員」が「正当な労働」につき、
それぞれの職場で、
「シンパ」や「会員」を獲得し、
運動資金は「会費」と「カンパ」でまかなうという
社会運動の原則に立ちかえる以外にない。
[日本の右翼]p132-133
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