須知校 山内昭男【社頭の感激:遺児の感想文集】昭和17年
【社頭の感激:遺児の感想文集】
靖國神社門前に於ける記念撮影
〔画像〕p3【社頭の感激:遺児の感想文集】
(右 頁)出發前に於ける記念撮影
(左頁上)府廳正面玄關に於ける出發式
(左頁下)府廳正面出發
〔画像〕p4-1【社頭の感激:遺児の感想文集】
出發前に於ける記念撮影
〔画像〕p4-2【社頭の感激:遺児の感想文集】
(右頁上)京都驛構内に於ける解散式
(右頁下)解散式に於ける萬歳三唱
(左 頁)はしがき 昭和十七年十月 軍人援護會京都府支部
〔画像〕p5【社頭の感激:遺児の感想文集】
須知校 山内昭男 p48-49/102
父を護國の神とした僕等靖國の遺兒は
「元氣で對面しておいで。」
との母の聲を後に京都驛を出發した。
汽車は山野をまつしぐらに走り續け、
翌朝二十六日、東京驛に着きました。
初めて見たあこがれの都
父のまつられてある東京の驛頭に降り立ちました。
僕は長い間の汽車のつかれも忘れて、
元氣の滿ちるのをおぼえるのでした。
二十七日には畏れ多くも宮城前で
天皇陛下の鹵簿を奉拜し、
神宮外苑の式典に臨みました。
さうして 皇后陛下より御下賜の御菓子をいただき、
朝香宮殿下より有難き御言葉を賜はりました。
其の上 陸海軍大臣よりは、
色々とおなぐさめや激勵の御言葉をいただき、
言ひしれぬ感激に胸が一ぱいでした。
あくれば二十八日、
今日こそ待ちに待つた父と對面の日です。
僕等は靖國神社へ、靖國神社へと歩を進めました。
前方には、あの有名な靑銅の大鳥居が
大東亞戰爭の勝利を祝するやうに雄然と立つてゐます。
大村益次郎の銅像を左に見て第二の大鳥居をくぐりました。
一歩、一歩と亡き父に近づくのだと思ふと、
うれしくて うれしくて足どりも、をどるやうでした。
境内の櫻は僕等が來るのを待つて居たやうに、
今を盛りと咲いて居ます。
淸水で手を洗ひ、口をすゝいで拜殿へと進みました。
正面本殿には宮司さんのお話の通り、大きい
立派な御鏡がありました。
じつと御鏡を見つめてゐると
父の笑顔がうつつてゐるやうに感じました。
父の勳功も此の鏡の一點に光をはなつてゐるのかと思ふと、
かたじけなさで涙が出て來るのでした。
僕は靜かに頭を下げつゝ社頭の父に誓ひました。
「お父さん昭男です。光陰は矢の如しと申しますが
亡くなられてから早五年目になりました。
僕もこんなに大きくなつておそばに參りました。
家の者も皆元氣で家業に勵んでをります。
僕もこれから益々學業に勵み強く正しい日本國民となります。
どうか此の立派な御社で
僕が立派な日本人となるのをお待ち下さい」と、
まぶたに浮ぶ父の面影もさすがに嬉しさうに
ほゝゑんで居ました。
僕は此の時の誓ひ、この時の感激を一生忘れず、
お父さんに負けない立派な人となつて
君國の爲に盡くしたいと思つて居ます。
昭和十七年十月十二日印刷
昭和十七年十月二十日發行 〔非賣品〕
恩賜財團 軍人援護會京都府支部
編輯兼發行者 進藤友之
印刷所(西京七) 京都市下京區西洞院通七條南入
内外出版印刷株式會社
代表者 須磨勘兵衞
發行所 京都府廳内
恩賜財團 軍人援護會京都府支部
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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