《水島銕也:增田宋太郎の甥》
【人物分布観. 上篇】大庭柯公:明治43年

【人物分布観. 上篇】明治43年1月15日発行
▲之を大觀するに南豊士人の二異彩は
 雅にして奇なるもの其一なり、
 俗にして願なるもの其二なり。
 龍渚竹田佛山より一變しては
 明治の奇狂兒 增田宋太郎の如き前系に屬し
 川路聖謨福澤諭吉の如き
 常に後系に入るべし。
▲倉成龍渚は中津の藩儒なり
 而も彼の本領は學識にあらずして意気に在り、
 老職梅田某の威權に抗して
 弾劾を屢したるの邊に在り
 世を慨するの餘、
 老西郷に投じ年三十にして自刃したる
 增田宋太郎は龍渚と時と隔つる數十歳なるも
 其悲憤の気魄に至りては正に同系の人たり。
明治十年薩南男兒の南洲翁を擁して事を擧ぐるや、
 壯士數百を率ゐて中津城を襲ひて之を陥れ、
 更に大分城に迫りて利あらず、
 乃ち薩軍に投じて轉戰十數回、
 終に城山に翁と共に自刃したるものは增田宋太郎なり。
▲奇矯なる增田の甥には今則ち水島銕也あり。
 銀行に關して學理と實地とに通ずる
 當代第一の稱ある神戸高商の彼が、
 その福澤熱の旺盛を極めたる時において
 中津出身の學生として三田に走らずして
 獨り神田學系に學びたるの抱負に至りては、
 快男兒 增田宋太郎と共に
 雅にして奇なる第一系に屬すべきの人たり。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/778166/26
明治四十三年一月 十日印刷
明治四十三年一月十五日發行
金 六十錢
著作者 大庭柯公
發行者 杉本 要
    大阪市東區北渡邊町八十九番地
印刷者 堀越 幸
    大阪市西區阿波座二番町一番地
發兌元 梁江堂書店
    東京市京橋區中橋廣小路
    電話 本局 五七七番
發兌元 杉本梁江堂
    大阪市東區北渡邊町
    振替口座 東京二八二三番
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