【法廷証第405号: 台灣及厦門産阿片取引ニ關スル件/
エム・アール・ニコルソン】
9507-1
中華民國上海、米國領事館氣付
財務官
エム・アール・ニコルソン
一九三四年（昭和九年）十一月九日
華盛頓關税部
税務司殿
台灣及厦門産阿片取引ニ關スル件
我ガ厦門駐在事務官ヨリ昨日接手セル報告ニ依レバ、
福建省阿片專賣局ノ主要代理商タル
鶯通公司ノ取締役會長トシテ著名ナル
パウル・イツプ指導下ニアル厦門阿片同盟ト
臺灣總督府トノ間ニ巨額ノ阿片取引ニ關シ
目下協定中ナリト云フ。
本報告ハ過去數週間中我ガ厦門駐在事務官ニヨリ
阿片界ノ活動狀况ヲ慎重ニ觀察セシ結果ニシテ、
之ハ臺灣ニ於ケル日本陸軍方面ニ精通シ、
最近臺灣ヨリ歸還ノ途中
パウル・イツプト偶然同船セシ
彼ノ友人タル一日本人ニヨリ確認セラレタリ。
過グル數ケ月ニ亘ル
パウル・イツプト日本人トノ密接ナル關係ニ鑑ミ、
且他ノ方面ヨリ接手セル報告ヨリ判斷シテ、
我ガ厦門駐在事務官ヨリノ本報告ハ
充分ナル基礎ヲ有スルモノト信ズル。
パウル・イツプハ臺灣總督府阿片專賣局
當局ノ招待ニヨリ、
厦門臺灣公會ノ會長ニシテ
強喝者トシ
〔画像〕p1【法廷証第405号】
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テ有名ナ陳長福ト同道臺北ヲ訪問セリ。
彼等ハ十月十七日汽船鳳山丸ニテ厦門ヲ出帆シ、
二十二日同汽船ニテ歸還セリ。
彼等ノ使命タルヤ南支那方面ヘノ供給並ニ麻醉藥製造ノ爲メ
大量ノ波斯阿片ノ購入ニ關シ臺灣ニ於ケル ※波斯（ペルシャ）
日本當局ト交渉ヲ目的トセルモノナリ。
波斯阿片ハ外交上ノ理由ニヨリ
過去四年間臺灣ニ於テ保有セラレタルモノナリ。
滿洲事變以來臺灣駐屯ノ日本陸軍ハ
中國人叛逆者ヲ買収スルト共ニ
福建省ノ奥地ニアル叛逆的罷賊軍ヲ治安攪乱ノ手先トシテ
援助スルコトニヨリ
福建省内ニ干渉ニ好都合ノ雰圍氣ヲ生ゼセシメントシ、
且結局ニ於テ福建ノ併呑ヲ作謀セリ。
此作謀タルヤモトヨリ巨額ノ費用ヲ要スルモノニシテ、
日本政府ハ陸軍當局ノ要求ニ從ヒ此ノ大量ノ波斯阿片ヲ賣却シ、
ソレヨリ生ズル収益ヲ以テ
福建ニ於ケル作戰費ニ充ツルコトニ同意セリ。
第十九路軍ノ統治失脚後間モナク
杜起雲將軍福建ニ派遣セラルヽヤ
嚴崎ト稱スル日本軍部ノ一代理者厦門ニ來リ
福建ニ於テ傀儡政府樹立ニ關シ
杜將軍ト共同陰謀ヲ策セリ。
彼嚴崎ハ價格拾萬圓以上ニ達スル大量ノ波斯阿片ヲ持チ來リタルガ
是ハ奥地ニ於テ罷賊軍再編成ニ
〔画像〕p2【法廷証第405号】
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當リ杜將軍ヲ援助センガ爲ナリキ。
嚴崎及其ノ部下ニヨル此ノ波斯阿片ヲ
臺灣ヨリ厦門ヘ密輸入スルニ當リ
中國税關員トノ間ニ數次ニ亘ル武力衝突ヲ惹起セシモノニシテ
此ノ事件ハ今尚世人ノ記憶ニ新シキトコロナルベシ。
杜將軍ノ叛逆的陰謀ハ間モ無ク
上級官憲ノ發見スルトコロトナリ、
其ノ後彼ハ逮捕セラレ、
死刑執行ノ爲メ南昌ニ護送サレタリ。
日本軍部代理者タル嚴崎モ其ノ後間モ無ク殺サレタリ。
カクノ如クシテ此ノ計畫ハ崩潰セリ。
此ノ計畫失敗後日本軍ハ厦門ノ有名ナル恐喝者タル
臺灣人陳長福ノ手ヲ經テ
パウル・イツプニ對シ上述ノ波斯阿片ヲ南方支那ニ供給シ
且麻醉藥製造ノ爲、
原價一千万圓ナルモノヲ五百万圓ノ割引値ヲ以テ
賣却方ヲ依頼セリ。
此ノ取引ニ關スル全條件ハ双方間ニ一致ヲ見タリ。
其ノ約定ニヨレバ一方
パウル・イツプハ百萬圓ノ前渡金ヲ納付セザルベカラズ
他方日本軍ハ砲艦ニテ運搬シ厦門ニ於テ
該阿片ヲ引渡スコトヲ保證スルモノナリ、
殘額四百萬圓ハ、
或一定期間中ニパウル・イツプ一派ニヨリ支拂ハルベキモノナリ、
パウル・イツプノ臺灣訪問ハ極秘裡ニ行ハレタルモノニシテ、
〔画像〕p3【法廷証第405号】
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彼ハ歸還以來連累者トノ談合、
此ノ取引ニ必要ナル資金ノ調達等ニ多忙ヲ極メツヽアリ、
此ノ取引ハ、
商業的考察ハ別トシテ、
重大ナル政治的意義ヲ有スルモノト信ゼラル、
〔画像〕p4【法廷証第405号】
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資料作成年月 1946
レベル 文書名:GHQ/SCAP Records, International Prosecution Section =
連合国最高司令官総司令部国際検察局文書 ;
Entry No.327 Court Exhibits in English and Japanese, IPS, 1945-47
注 記 原所蔵機関: 米国国立公文書館 (RG331)
コレクションタイトル: 日本占領関係資料
コレクションタイトル:
General Headquarters/Supreme Commander for Allied Powers
資料種別 : [マイクロ資料]
原資料の出版事項: ?/?-1946/09
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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