圍碁の上から見た維新の元勳【大隈侯一言一行】大正11年
【大隈侯一言一行】大正11年
(三三) 圍碁の上から見た維新の元勳 p80-81/294
(大隈重信侯爵)侯は圍碁の趣味を有せられて、
維新の元勳らと其伎倆を戰はせ、
盤上に時ならぬ風雲去來を味はれたが、
それについて、先年、侯が圍碁の上は現はれた
元勳の性格を適切に批評されたことがあつた。
侯曰く
「伊藤(博文)はあの位な才子だが、碁にかけては駄目だ。
我輩よりは餘程下手である。
福澤(諭吉)もあの位活達な男であつたが
碁にかけては實に痴であつた。
考へることが長くつて對手は實に困つた。
岩倉(具視)と大久保(利通)は兩人ともなかなか上手であつた。
どちらかと云ふと、大久保(利通)の方が少し上手であつた。
ところが大久保(利通)は激し易い人であつたので、
岩倉(具視)はその呼吸を知つて居るから、
對局中、常に大久保(利通)を怒らせて勝を取つた。
兒島惟謙はなかなか強情張りで
圍碁にもなかなか岡目の助言を聞かぬ。
どうしても助言に聽かざるを得ない時には、
助言に從ふとは云はん、
その手もあると云つて自分の思ひつきとして行る」と。
大正十一年二月廿五日印刷 大隈侯一言一行
大正十一年二月廿八日發行 定價金貳圓三十錢
著 者 市島 謙吉
東京市牛込區東五軒町三五
發行者 種村 宗八
東京市牛込區辨天町一五七
印刷者 渡邊八太郎
東京市牛込區榎町七
發行所 早稻田大學出版部
東京市牛込區早稻田
振替東京一一二三番
日淸印刷株式會社印刷
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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