京丹波町議会「椅子議論」《取材ノート》
京都新聞 南丹支局 佐々木千奈記者2021/06/09
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取材ノートから 南丹支局 佐々木 千奈
ささき・ちな 2020年入社。
同年5月から南丹支局で、京丹波町の行政や議会、
まちの話題などを取材している。
京丹波町新庁舎議案3度の否決
「椅子議論」に住民利益見えず
京都府京丹波町議会で3月末、「椅子議論」が巻き起こった。
8月末完成予定の町役場新庁舎正副議長室の椅子と机を
町長室より安価な品とする備品購入契約案が、
説明不足を理由に否決された。
町は、町長と同じ椅子と机にグレードアップさせ、
現町長室のソファなどを
新正副議長室で再利用する計画も新品購入に変更。
議会は可決した。
〔写真〕再利用が見送られた現町長室のソファとテーブル
(京丹波町蒲生・町役場)
地方議会は住民の利益を求める議論の場だと思っていたが、
町長と議長の備品を巡り、
町長と議会は対等とする「二元代表制」の言葉まで出して
繰り広げられた議論に、ただ驚いた。
新庁舎整備事業は、現庁舎の老朽化が著しいことを受け、
前町政時代から整備計画が進められていた。
2017年に初当選した太田昇町長も建設を継承。
建材に町産木材を活用し「森林の町」のシンボルと位置付ける。
総事業費は32億円となる見込みだ。
合併以来最大の懸案事業だが、
否決の背景の一つには町長に不利な議会構成がある。
町議会は現在、定数16。
前町政を支えた会派の後継「丹心会」が
議長を除き5議席で全体の約3分の1を占める。
一方、前町長選を機に、
太田町長を支持する3議員で構成された「丹栄会」は
今年1月に事実上解散。
「少数与党」の構図に拍車が掛かった。
こうした中、町議会は2019年4月以降、
新庁舎整備に関連する木材調達案や外構工事案を、
費用が高いと否決してきた。
ただ、いずれも最終的には原案通り可決という
不可解な経緯をたどった。
「椅子議論」は、3度目の否決劇。
町は正副議長の椅子だけでなく、
議員準備室の備品も新品に替え、
代わりに職員用備品の更新を見送るなど修正案を提出。
5月末、議会は賛成多数で可決した。
賛成に転じた議員は
「前回は議会に購入案を示した翌日が開札日で
意見を反映させる余地がなかったが、
今回は事前に説明があった。
備品が良くなったから賛成するわけではない」とした。
しかし、町が入札前に修正案を示した今回、
町民サービスに関わる備品に見直しがないことを
指摘する声はあったものの、
議員の備品が良くなることへの異論はなかった。
結果、議場内の議席を含め議員の備品は全て新品になった。
当初案から正副議長室の備品が町長室と同じものだったら、
議会は同様に否決していただろうか。
疑問が浮かぶ。
町では、11月の任期満了に伴う町長選、町議選を控えている。
「椅子議論」をはじめとする新庁舎を巡る一連の議論では、
町側の説明不足も繰り返し指摘されている。
前町政を支えた議員側と町長、
双方の意思疎通の不足の結果ともとれ、
前回選の対立を引きずる構図が透ける。
町は、2005年の合併当初から比べると人口は16年で4千人減。
財政状況も悪化しており、取り組むべき課題は多い。
旧来の対立ではなく、
子どもの声が響く持続可能な町に向けて模索する議論こそを
追いかけたい。
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blog[小野一雄のルーツ]改訂版
2021年04月16日
議員用の備品を良くし、町職員の備品の質を下げる内容:
京丹波町新庁舎備品購入案─
京都新聞令和3年(2021)4月15日
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blog[小野一雄のルーツ]改訂版
2021年04月17日
[正副議長室][議員準備室1-4]
『変更あり』京丹波町新庁舎備品購入案
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blog[小野一雄のルーツ]改訂版
2021年06月02日
京丹波町議会議員16名の一般質問回数(15議会):
令和3年6月2日作成
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