《小野梓》明治14年の政変:
局面展開の策を籌(めぐ)らしたる時、内閣諸公を評して
【森有礼と星亨】大正7年

【森有礼と星亨】大正7年
  (三六)一方には共存同衆  p56-57/133
 森、福澤等の明六社を組織したのが一誘因となつて、
當時明六社に對抗して、
其の年齡二十五歳ばかりの靑年の組織した
共存同衆といふ團體が現はれた。
 卽ち小野梓、島田三郎、金子堅太郎、三好退藏、
大内靑巒、菊池大麓、井上良一、江木高遠、
馬場辰猪、外山正一、矢野文雄などの團體で、
大内靑巒が當時の狀を述ぶる所に據ると。
  明治六年に西村〔西村茂樹〕、津田〔津田真道〕、
  福澤〔福沢諭吉〕、中村〔中村正直〕などといふ
  當時の學者達が明六社といふものを起した、
  自分は其の明六社に入らぬかと勸められた。
  ところが自分等の若い仲間にも、
  其れぞれ尚黨派といふものでは無いが、
  常に往來した友達がある。
  其中の餓鬼大將、小野梓がナカナカ強情な奴で、
  ナニあんな老ボレの仲間に入ることはない、
  我々も別に行(や)らうじゃ無いかといふので
  彼の共存同衆といふ會が出來た。
と言つて居る、
此の共存同衆なるものは、
人間共存の道を講ずるために、
大に法律、敎育、衛生、理財の道を研究する會合で、
我國に公衆を集めて、演説會を開く元祖となつた。
 要するに、明六社にせよ、共存同衆にせよ、
共に主として當時に於ける民間有爲
の士を集めて、
輿論なるものを喚起するの誘因となつた事は
逸すべからざるものである。

  (四一)明治十四年の政變  p62-63/133
 自由黨の起因は、
板垣伯が多年輿論政治を希望するに胚胎し、
改進黨の起りたる直接の原因は、
明治十四年の政變に基いて居る。
 卽ち時は恰も明治十四年の六月、
北海道開拓使の官有物拂下の議が政府部内に起り、
當局者は私意を逞(たくまし)うして
此の官有物を極めて安價に、
一部の御用商人に拂ひ下げやうとした。
 スルト、時の參議大隈重信は
頑として薩長出身の同僚に對して、
其の當を得ざる處置たることを責めた。
  -略-
  blog[小野一雄のルーツ]改訂版
  2016年05月07日
  《小野梓=士族から平民》「明治14年の政変」
  姜範錫=元駐日韓国公使:平成3年
  blog[小野一雄のルーツ]改訂版
  2019年12月18日 03:40
  明治14年の政変における小野梓の決定的役割を描く:姜範錫1991
  -略-
 スルト、薩長出身の政治家は、深く大隈を惡(にく)み、
其の憎惡の極は、大隈の排斥運動となり、
果ては、官有物の拂下は之を取り消し、
同時に明治二十三年を期して、
帝國議会を開設すべき聖詔が下だつたのである。
 尋いて、大隈は諭旨によつて其官を免ぜられ、
大隈と志を同じくしたる小野梓、
矢野文雄、島田三郎、尾崎行雄、中上川彦次郎、
牛場卓造、牟田口元學、中野武營、犬養毅等の
少壯官吏は皆其職を辭し去つた。

  (四二)局面展開の策  p64/133
 辭し去ると共に、
民間に在りて政黨を組織したものが、
卽ち改進黨である、而して、
黨時小野梓が局面展開の策を籌(めぐ)らしたる時、
内閣諸公を評して。
『三條〔三條実美〕は既に其の要請を論破するの實力なく、
 また職を辭するの意あり、
 岩倉〔岩倉具視〕は避けて此の問題に與(あづ)からず、
 却つて此機に乘じて一政黨を團結するに意あり、
 加ふるに、彼れ河村と同行東上す、
 其意測るべからず、
 山縣〔山縣有朋〕は彼此(あれこれ)の強弱如何を觀望し、
 山田〔山田顕義〕は判然、我に與(くみ)せず、
 伊藤〔伊藤博文〕は優柔不斷、到底薩長の連衡を夢みて、
 未だ覺めざるが如し。
 且つ薩州出身の參議の如きは、
 黑田〔黒田清隆〕は言ふも更なり、
 其他の人といへども、
 大抵薩閥の衰ふるを恐れ、
 寧ろ一結して我黨に當るが如し、
 井上〔井上馨〕は表面に於て、
 敢て此事に關せざるが如くすと雖、
 大に異圖を抱き、
 我黨に抗する事は平生の所爲を以て之を卜するを得べし。
  また陸軍部内に鳥尾〔鳥尾小弥太〕、三浦〔三浦梧楼〕、
 谷〔谷干城〕等の建議あり、
 少しく我黨に利あるの觀ありといへども、
 極度これを恃むに足らず』
と叙して居るが、
當時の形勢を觀察する一史料たるを失はぬ。

大正七年六月二十一日印刷
大正七年六月二十九日發行 (定價金六拾五錢)
著作者 髙橋 淡水
發行者 河中俊四郎
    東京市小石川區小日向臺町一丁目十四番地
印刷者 加藤  保
    東京市神田區三崎町三丁目一番地
印刷所 文明社印刷工場
    東京市神田區三崎町三丁目一番地
發兌元 良書普及會
    東京市小石川區小日向臺町一丁目十四番地
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【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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