［支那渡航婦女ノ取扱ニ關スル件］内務省警保局長 昭和13年(1938)2月
昭和12年(1937)8月
（寫）
内務省發警第五號
昭和十三年二月二十三日
内務省警保局長
各廰府縣長官宛
支那渡航婦女ノ取扱ニ關スル件
最近支那各地ニ於ケル秩序ノ恢復ニ伴ヒ
渡航者著シク增加シツツアルモ
是等ノ中ニハ同地ニ於ケル料理店、飲食店、カフエー
又ハ貸座敷類似ノ營業者ト聯繋ヲ有シ
是等ノ營業ニ從事スルコトヲ目的トスル
婦女寡[すくな]カラザルモノアリ
更ニ亦内地ニ於テ是等婦女ノ募集周旋ヲナス者ニシテ
恰モ軍當局ノ諒解アルカノ如キ言辭ヲ弄スル者モ
最近各地ニ頻出シツツアル狀況ニ在リ
婦女ノ渡航ハ現地ニ於ケル實情ニ鑑ミルトキハ
蓋シ必要已ムヲ得ザルモノアリ
警察當局ニ於テモ特殊ノ考慮ヲ拂ヒ
實情ニ卽スル措置ヲ講ズルノ要アリト認メラルルモ
是等婦女ノ募集周旋等ノ取締ニシテ
適正ヲ缺カンカ
帝國ノ威信ヲ毀ケ
〔画像〕1723981-5
皇軍ノ名譽ヲ害フノミニ止マラズ
銃後國民特ニ出征兵士遺家族ニ
好マシカラザル影響ヲ與フルト共ニ
婦女賣買ニ關スル國際條約ノ趣旨ニモ
悖[もと]ルコト無キヲ保シ難キヲ以テ
旁々現地ノ實情其ノ他各般ノ事情ヲ考慮シ
爾今之ガ取扱ニ關シテハ
左記各號ニ準據スルコトト致度依命此段及通牒候
記
一、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ハ
現在内地ニ於テ娼妓
其ノ他事實上醜業ヲ營ミ滿二十一歳以上
且花柳病其ノ他傳染性疾患ナキ者ニシテ
北支、中支方面ニ向フ者ニ限リ
當分ノ間之ヲ黙認スルコトトシ
昭和十二年八月米三機密合第三七七六號
外務次官通牒ニ依ル身分證明書ヲ發給スルコト
二、前項ノ身分證明書ヲ發給スルトキハ
稼業ノ假契約ノ期間滿了シ又ハ其ノ必要ナキニ至リタル際ハ
速ニ歸國スル樣豫メ諭旨スルコト
三、醜業ヲ目的トシテ渡航セントスル婦女ハ
必ズ本人自ラ警察署ニ出頭シ
身分證明書ノ發給ヲ申請スルコト
四、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ニ際シ
身分證明書ノ發給ヲ申請スルトキハ
必ズ同一戸籍内ニ在ル
最近尊属親、尊属親ナキトキハ
戸主ノ承認ヲ得セシムルコトトシ
若シ承認ヲ與フベキ者ナキトキハ
其ノ事實ヲ明カナラシムルコト
五、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ニ際シ
身分證明書ヲ發給スルトキハ
稼業契約其ノ他各般ノ事項ヲ調査シ
婦女賣買又ハ略取誘拐等ノ事實ナキ樣
特ニ留意スルコト
六、醜業ヲ目的トシテ渡航スル婦女
其ノ他一般風俗ニ關スル營業ニ從事スルコトヲ
目的トシテ渡航スル婦女ノ募集周旋等ニ際シテ
軍ノ諒解又ハ之ト連絡アルガ如キ言辭其ノ他
軍ニ影響ヲ及ボスガ如キ言辭ヲ弄スル者ハ
總テ嚴重ニ之ヲ取締ルコト
七、前項ノ目的ヲ以テ渡航スル婦女ノ募集周旋等ニ際シテ
廣告宣傳ヲナシ又ハ事實ヲ虚偽
若ハ誇大ニ傳フルガ如キハ總テ嚴重
之ヲ取締ルコト又
之ガ募集周旋等ニ從事スル者ニ付テハ
嚴重ナル調査ヲ行ヒ正規ノ許可
又ハ在外公館等ノ發行スル證明書等ヲ有セズ
身許ノ
〔画像〕1723981-6
確實ナラザル者ニハ之ヲ認メザルコト
（三）支那渡航邦人數調
昭和十三年中 九二、三二八名
昭和十四年
自一月 至三月 三五、六三九名
内譯 一月中 九、三七五名
二月中 一〇、一二五名
三月中 一六、一三九名
〔画像〕1723981-7
（四）地域別及種類別調（昭和十四年三月分）
※詳細は画像参照
初渡航者 一四、七五六
再渡航者 一、三八三
計 一六、一三九
〔画像〕1723981-8
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レファレンスコード A06030112800
件名 渡支邦人取締状況・不良分子ノ渡支取締方ニ関スル件
国立公文書館 返還文書 〔返青・内務省等関係〕
渡支邦人取締状況・不良分子ノ渡支取締方ニ関スル件
[規模]8
作成年月日 昭和１２年８月３１日
作成者 外務省次官 堀内謙介
組織歴 内務省
『国立公文書館・アジア歴史資料センター』
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有馬哲夫
@TetsuoArima
「皇軍慰安婦女渡航につき」と
「不良分子の渡支取締方に関する件」（ともに1937年）は
内務省通達と同じものが朝鮮に伝達されていたことを証明しています。
つまり、日本の官憲は契約書などをチェックしていたのです。
これは朝鮮人慰安婦も契約がなければ
海外渡航ができなかったことを証明するものです。
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