臺灣館【第五回内国勧業博覧会案内記】明治36年2月
【第五回内国勧業博覧会案内記】明治36年2月
臺灣館 p54-55/132
今回の博覽會中、來觀物の目を曳くもの多かるへきも、
臺灣館より其附近一面の光景の如きは、
最も衆目を惹くの場所となるべし、
今臺灣總督府の計畫設備の大要を述べんに、
總督にては、成るべく臺灣の出品を奨勵し、
内地人をして居なから、
臺灣の眞札を合点せしむると同時に、
成るべく多數の臺灣人を勸誘して、
博覽會を見せしめ、
大に彼等の智議啓發に資せんとの考より、
博覽會費として三萬圓を支出し、
外に有志の寄附を求め、
博覽會事務局とも交渉の結果、
出品は凡五六千点を陳列することゝなり、
其の爲め別に臺灣風建物を築造するに至りし次第にして、
單に樓門、家屋等を臺灣風にするのみならず、
喫茶店を設け料理店を拵へ、
來客への應待等より看守人に至るまでも、
凡て臺灣人を用ふることゝし、
此外臺灣の花卉、竹木を空地に栽江、
池には數頭の水牛を放つなど、
四圍の光景をして、
全く臺灣的たらしむると同時に、
出品の陳列棚、陳列箱の如きに至るまで、
特種の模型装飾を用ふるの趣向にして、
其出品物には、同地の天然産物製造品は云ふに及ばず、
昆虫標本、衣服の雛型、衣服刺縫までも陳列することゝし、
又土人の塑像十体を造り、
之に臺灣土人の服装を爲さしめ、
同土人の居家、交際の風俗習慣等までも、
實地に見るの思わらしむるの趣向なり、
明治三十六年二月 八日印刷
明治三十六年二月十六日發行 定價金貳拾五錢
編纂者 井上熊次郎
發行者 根子久三郎
東京市神田區淡路町二丁目二番地
印刷者 田中富太郎
東京市芝區櫻田本郷町十四番地
發行所 考文社
東京市神田區淡路町二丁目二番地
電話本局八五九番
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