団塊パンチ4
団塊パンチ編集部
飛鳥新社 2007-235ページ

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〔画像〕001Dankai Punch

【木村英輝】
 ロックを通じて
 日本を変えたい
高瀬川のほとり、
京都西木屋町の喫茶店「琥珀」で
チャー坊こと柴田和志と、
フジオこと山口冨士夫に会うことになった。
何か私に相談したいことがあるというのである。

窓の下を流れる高瀬川のせせらぎを眺めながら
二人を待った。

冨士夫はGSのダイナマイツをやめ、
一年前、東京から京都に引っ越していた。
その頃に私の家を訪ねて来ていた。

どうやら才能ある
カッコいい若者をみると世話をやく、
新宿のユニット・プロ、
五味ちゃんから
「キーやん(私)のとこに行けば、
 何かおもしろいことに出会える」
と聞かされたようだ。
冨士夫は新しい人生へのきっかけを
つかみたかったのだろう。
もの静かに正座する彼にはオーラがあった。
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私は、喫茶店で彼らを待ちながら、
「今まで家にやってきた若者で一番礼儀正しい人」、
「芸能界で苦労したのだろう。
 ただ甘やかされて育ったボンボン、
 格好つけるだけのフーテンとは物腰が違う」
――女房チーコとの会話を思い出していた。

チャー坊と冨士夫の二人が現われた。
私の家を訪ねた後、
冨士夫がチャー坊とどこで、
どうして出会い、
付き合いが始まったか、
定かではなかったが、
東京、深大寺のロック・フェス
「TOO MUCH」の雨の中、
肩を並べて歩く二人の情景が浮かぶのである。

目の周りを黒のアイ・シャドーで
きつくメイクした二人は席に着いた。

「キーやん金儲けをやろう」
チャー坊の第一声だった。

「冨士夫ちゃんとバンドを作ったんや。
 名前は『村八分』や」
「キーやんがプロデュースしてくれたら
 大金持ちになれる」。
そう言うチャー坊の態度は自信に満ちていた。

村八分は売れる魅力をいっぱいもったバンドだ。
あとは売り出すだけ。
それを私に頼みたいとのことだった。

横に座る冨士夫はすべて納得済みという様子だった。
ロック・フェスのプロデュースに夢中だった私には
あまりにも唐突な話だった。

しかし、私にはロック・ムーブメントを通
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じて日本を変えたいという夢があった。

これは何かの縁かもしれない。
チャー坊の話は信用できる。
「村八分」のプロデュースをやるやらない、
の前に
MOJO・WESTの杮(こけら)落としに
彼らに出演してもらうことになった。

後々まで語り継がれることになる
スーパーGS、「PYG」(豚野郎)と、
伝説のロックバンド「村八分」の
衝撃的なライブが実現するのだ。

「村八分」のメンバーは、
ボーカル・故柴田和志、
ギター・山口冨士夫、
ギター・故浅田哲、
ベース・青木真一、
ドラムス・上原ゆかり
だった。
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京大西部講堂で ロックが爆発した!!
昭和46年(1971)3月20日
第一回<MOJO-WEST>の熱気をここに再現
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