【学区大観 修道貞教版】昭和9年
著者    河合白戦 著
出版者   東山日日新聞社
出版年月日 昭和9
《竹内千代女史》
  女性の鑑
  貞節五十有餘年
鞘町正面上ル正面町、
洋鐵、鋼材卸商竹内商店は
往昔「鐵仲間」と言つた時代からの
古い鐵屋さんである。
當主竹内千代女史は
元治元年十一月四日(1864年12月2日)を以て
佐兵衞氏の長女に生れ、
槇村知事時代現今の女學校程度の課程を終へ
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直ちに婿養子を迎へたが
不幸夫君は假そめの病がもとで
不歸の客となつてしまつた。
時に女史は十九歳。
其後切なる再婚の勸めにも亡夫への貞節を守つて
一切耳を藉さず、
うら若い身を以て獨身生活を續け
信仰と事業に邪念を拂ひ
全生命を之に打ち込んだ、
爾來五十年自ら第一線に立つて
多數の店員を指揮督勵し
文字通りの奮闘を續け
而も愛國婦人會京都支部理事、
赤十字社京都支部評議員、
京都婦人慈善會常任幹事等として
社會公共の爲に活動され
永觀堂幼稚園創立に盡力された功績は
實に偉大なるものがある。
又毎年十二月金光院で貧困者に
餅を施與(匿名で)するなど
隱れたる奇篤行爲も多く
女史こそは眞に女性の龜鑑とも
云ふべきであらう。

女史は今年七十一歳
尚矍鑠たるものであるが
近年は甥(女史は孫と呼ぶ)
泰次郎(同志社高商出)
雅之助(神戸高商出)の兩氏に
經營一切を委ね、
只管念佛三昧と茶道に
つゝましく餘生を送りつゝある。
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昭和九年十二月二十日印刷 學區大觀修道貞敎版
昭和九年十二月廿五日發行 定價 金三圓五十錢
編輯兼   河井 喜重
印刷發行者 京都市東山區今熊野劔宮町五
印刷所   東山日日新聞社印刷部
      京都市下京區中堂寺壬生川町一〇
發行所   東山日日新聞社
      京都市東山區今熊野南日吉町一
https://dl.ndl.go.jp/pid/1024525/1/134
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