【国土問題 (31)】1985-07
出版者 国土問題研究会
出版年月日 1985-07
〔画像〕p1【国土問題 (31)】1985-07
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/1
産業廃棄物の埋立処理
―その現状と課題―
中島 晃(弁護士)
<1. はじめに>
<2. 問題の発端と予定地区選定の経過>
(1)京都府のほぼ中央に位置する
丹波高原の兵庫県よりにある
京都府船井郡瑞穂町(現:京丹波町)に、
産業廃棄物埋立処理場(以下、産廃処理場という)の
建設計画がもちあがったのは
1979年(昭和54年)11月のことであった。
京都府農業開発公社が、
その5年前の1974年(昭和49年)に
瑞穂町(現:京丹波町)の
梅田財産区と三ノ宮財産区から
農用地開発を目的として買受けた土地を、
農用地の開発に失敗したために、
産廃処理場の用地として転売しようという
計画がもちあがったのである。
当時、梅田、三ノ宮の両財産区と
農業開発公社との間に取り交わされた
土地売買契約には、
買受けたときから5年以内に
農用地として開発できなかったときには、
財産区が売買代金に
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/34
5年分の利息をプラスした損失補償を支払って
土地を買戻す旨の損失補償契約が結ばれていた。
農地開発の失敗による農業開発公社の
赤字の穴埋めをはかるために、
京都府農林部の幹部は、
地元に直接乗り込んで損失補償契約をタテにして、
土地の買戻しか、
産廃処理場への転売かの二者択一を建ってきた。
(2)当初候補地にあがっていた
梅田財産区の鎌谷奥については、
梅田地域の住民が強く反対し、
産廃処理場への転売をあくまでも
承諾しなかったために、
鎌谷奥での処理場設置がゆきづまり、
候補地を他に求めざるをえなくなった。
その後、瑞穂町(現:京丹波町)のなかで
いくつかの候補地が物色されるなかで、
最終的に白羽の矢がたったのが
三ノ宮財産区の猪鼻であった。
当初は猪鼻地区でも区で反対決議がなされるなど
反対の声が強かった。
しかし、
産廃処理場の確保につとめていた京都府が、
当時の野中副知事を先頭に地元に乗り込み、
積極的に説得工作につとめるなかで、
最終的に1981年(昭和56年)1月、
猪鼻区が地区の条件整備に関する要望・意見を
対して受け入れを決定していった。
この設置受け入れ決定の背景には、
行政施策の立ちおくれのなかで
地域基盤が十分に整備されず、
このために過疎の進行におびえる
山村の焦りと苦悩がある。
(3)瑞穂町猪鼻が産廃処理場の
予定地に選定されたことは、
この問題をたんに瑞穂町だけの問題だけではなく、
瑞穂町に隣接する三和町さらには
福知山市域にまで広げることになった。
すなわち、
産廃処理場の建設予定地が
猪鼻川の最上流部に位置しており、
猪鼻川の河水は、
由良川水系の支流土師川に流入するところから、
土師川の清流に依拠して日々の暮らしを営んでいる
三和町、福知山市内等の住民に
産業廃棄物による水質汚濁等の
環境汚染について強い不安と危惧を
ひきおこすことになった。
これがやがて裁判闘争にまで発展する
大きな反対運動へと広がっていくことになった。
<3. 産廃処理場の計画概要>
(1)この産廃処理場の事業主体は、
産業廃棄物の処理・処分等を目的として
1974年(昭和49年)7月に
民間企業40社(株主名簿参照)の共同出資によって
京都産業サービス(株)の名称で設立され、
その後1981年(昭和56年)5月に新たに
京都府と京都市が出資し、
役員を派遣して社名も
(株)京都環境保全公社と変更した株式会社である。
京都産業サービス株式会社株主名簿
(昭和54年7月現在)(五十音順)
〔画像〕京都産業サービス(株)株主名簿(昭和54年7月現在)
この処理場は、
京都府船井郡瑞穂町(現:京丹波町)字猪鼻小字冠石
の谷間に建設される。
この谷間は、
由良川水系土師川の支流、
猪鼻川上流に位置しており、
瑞穂町(現:京丹波町)の北西、
五条山(標高568.5m)の北面と
府道大身下山停車場線に
はさまれた谷底面であり、
猪鼻川の最上流部にある。
(2)(株)京都環境保全公社作成の
「瑞穂環境保全センター環境影響調書報告書」
によれば、
建設計画の概要は次のとおりである。
計画概要 総面積29ha、
そのうち埋立場の面積約6.5ha、
埋立量約90万トン、
埋立期間約8年
埋立対象物 京都府内で発生する産業廃棄物。
直接埋立てるもの……
土砂、がれき、もえがら、
建設廃材、陶磁器くず、ガラスくず、
金属くず、鉱さい等。
1月当りの埋立予定量11,500トン、
埋立量全体の約97%を占める。
中間処理場で処理したのち
埋立てるもの……
汚泥、固形物等のもえがら、
廃プラ、ゴムくず、
汚泥類の無害化処理物等。
1月当りの埋立予定量285トン、
全体の約3%。
主な施設 埋立用ダム……
埋立場の最下流部に、
埋立て廃棄物の土留めのために
埋立用ダムを設置する。
排水処理施設……
埋立場からの浸出水を処理して、
清浄な処理水として放流するために
排水処理施設を設置する。
<4. 廃棄処理場の建設禁止を求める仮処分の提起へ>
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/35
<5. 産廃処理場計画の問題点>
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/36
<6. 仮処分審理の経過と和解の成立>
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/37
<7. 結びにかえて―
産業廃棄物処理をめぐる今後の課題>
(1)産業廃棄物処理の基本理念の確立
(2)現行の溶出試験と判定基準の抜本的再検討
(3)立地選定にあたっての住民合意の重視
(4)廃棄物の受入審査に関する公的審査制度の導入と
搬入時チェックに対する住民監視システムの確立
(5)埋立地からの処理水の水質および
地下水のモニタリングと住民監視
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/38
(6)公共関与における地方自治体の役割の
重要性と住民運動
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/39
昭和60年7月発行
発行所 国土問題研究会
〒604 京都市中京区二条通河原町西入ル
南館3階
TEL 075-241-1373
振替 京都8-44858
https://dl.ndl.go.jp/pid/2692677/1/47
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株式会社 京都環境保全公社
会社沿革
1974年 (昭和49年 7月)
京都産業サービス株式会社設立
民間出資企業 33社
1981年 (昭和56年 5月)
株式会社京都環境保全公社に商号変更
京都府・京都市の出資
1984年(昭和59年 2月)
瑞穂環境保全センター 最終処分場埋立事業開始
2004年 (平成16年 9月)
瑞穂環境保全センター 浸出水高度処理設備増設
2005年 (平成17年 7月)
瑞穂環境保全センター 最終処分場新埋立開始
2006年(平成18年 9月)
瑞穂環境保全センター ISO14001認証取得
2013年(平成25年 4月)
瑞穂環境保全センター 最終処分新埋立開始
2014年(平成26年 1月)
瑞穂環境保全センター新排水処理設備竣工
2024年(令和 6年 7月)
創立50周年記念事業(50年社史発刊)
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