【公害の法律相談 (法律相談シリーズ ; 13)】昭和46年(1971)
著者 谷口知平, 沢井裕, 淡路剛久 編
出版者 有斐閣
出版年月日 1971
https://dl.ndl.go.jp/pid/12006022/1/1
<住民と鉛工場で公害ゼロの誓約書>
鉛や亜硫酸ガスなど
人体・家畜・植物に有害となる物質は
一切ゼロであること――
京都府船井郡瑞穂町の住民は、
鉛工場と公害”ゼロ“を内容とする
誓約書をとりかわした。
もし違反した場合は、即刻、
工場を解体し移転する、
というきびしい罰則規定つき。
誓約書をとりかわしたのは、
同町猪鼻・三宮両地区住民で組織している
公害対策委員会(約八〇戸)と
猪鼻地区にあるN金属会社猪鼻冠石工場。
同工場は、ことし三月、
猪鼻地区の山間部に五トンの炉をすえ、
古バッテリーなどから
月約一〇〇トンの鉛の再生を始めた。
公害対策委員会の一メンバーの話では、
ツンと鼻につく甘ずっぱいような
亜硫酸ガス特有のにおいがして
「このままではたまらない」ので、
工場の操業開始後まもなく
対策委員会を結成したという。
会社側も
「住民が反発するのは理解できる」
と話合いの姿勢を示して協議を続け、
「施設の改善が終わるまでは」
と、同工場は
(二五五頁へつづく)
https://dl.ndl.go.jp/pid/12006022/1/141
(二五二頁よりつづく)
操業を中止している。
そして、住民は“公害ゼロ”の条件のほか、
工場の事業内容の報告、
集じん装置の内容の公開、
原材料を解体した後の外箱・廃液・薬物の完全な処分、
地域住民や関係機関の立入検査や視察を認める、
被害を出した場合は補償する――
などを定めた誓約書を示し、
会社側は認めた。
工場の権利を第三者に譲渡した場合、
新たな経営者もこの契約書に拘束されるという
付則もあるきびしいもの。
現在の技術では困難といわれている
”公害ゼロ“の問題について、
住民側は
「日ごろの会社側の誠意や公害防止に取り組む姿勢も
基準のひとつといえる。
国の環境基準だけでは公害は防げない」
といっている。
住民側は、
この誓約書の効果をさらに確実なものにするため、
この誓約書を公正証書にしようと
いま検討を進めている。
(『朝日新聞』昭和45年9月14日)
https://dl.ndl.go.jp/pid/12006022/1/142
1971年10月20日 初版第1刷印刷
1971年10月25日 初版第1刷発行
編 者/谷口知平・沢井 裕・淡路剛久
発行者/江草忠允
発行所/株式会社 有斐閣
東京都千代田区神田神保町2-17
印 刷/藤本綜合印刷株式会社
製 本/株式会社 高陽堂
https://dl.ndl.go.jp/pid/12006022/1/303
図書館・個人送信資料利用可 ログイン中【小野一雄】
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇