【慶応義塾出身名流列伝】明治42年
著者    三田商業研究会 編
出版者   実業之世界社
出版年月日 明42.6

赤坂龜次郎氏
共同出版會社 專務取締役
東京市京橋區彌左衞門町七
(安政五年生)

氏は安政五年五月(1858年6月)
福島縣石城郡上遠野に生る。
家世々農なれども帶刀御免の家格なり。
氏の父良忠氏に至り商業を營み傍ら農業に從事す。

良忠氏は夙に殖産興業の道に通じ、
其近郊の地味が蒟蒻粉製造に適するを知り、
郷黨に向つて大に之が栽培製造を勸誘したり。
現今同地方が蒟蒻粉の産出を以て
嘖々たるもの盖し氏の賜と云ふべし。

氏は幼にして聰明群に絶し、
村人常に氏の強記に驚く、
九歳にして郷儒小澤政美翁に薫陶を受け、
明治六年(1873)
磐前縣立惜陰學舎に入りて、
英學を修め、
明治九年(1876)五月
笈を負うて東京に遊び慶應義塾に入る。
當時氏は學資裕かならず。
殆んど書籍を購ふこと能はざりしに拘らず、
學業常に儕輩を抜き、
日本郵船會社重役吉武誠一郎氏と伯仲し
尾崎行雄、犬養毅氏等皆同窓なり。

明治十一年(1878)十二月
塾を卒業するや、
氏は敎育界の人たらんとの希望ありしに、
雪池先生の勸めによりて

横濱丸善商店に入り、
輸出入業に從事し、
此處に一年餘を過し、

更に東京丸善本店に轉じ、
出版部支配人となる。
氏が斯業に手腕を有することは
既に此時代より現はれたり。

當時故小野梓氏が
其著『國憲汎論』を刊行せんとせしに
何(いず)れの書肆も之を諾するものなかりしかば
氏は進んで之を引受けて出版し、
忽ちにして洛陽の紙價を貴(たつと)からしめたり。

【國憲汎論 上巻 第一章~第十六章】
著者    小野梓 著
出版者   小野梓
      丸家善七 (発売)
出版年月日 明治15年(1882)12月出版
      明治16年(1883)7月再版
明治十五年七月三十一日版權免許
明治十五年十二月出版
明治十六年七月再版
著述并出版人 東京府平民
       小野 梓
       府下北豊島郡地方橋場町千三百八十番地
印行并發賣人 東京府平民
       丸家善七
       府下日本橋區通三丁目拾四番地
p148【國憲汎論 上巻 第一章~第十六章】
〔画像〕p148【國憲汎論 上巻 第一章~第十六章】
【國憲汎論 中巻 第十七章~第三十一章】
著者    小野梓 著
出版者   相良剛造
      集成社書店 (発売)
出版年月日 明治19年(1886)9月再版
明治十五年七月三十一日版權免許
明治十六年四月    出版
明治十九年九月 十五日再版御届
明治十九年九月    再版
著 者 故人 小野 梓
出版人 相良剛造
    府下北豐島郡千四百十一番地
發 兌 集成社書店
    府下神田小川町拾番地

後ち氏が同社を辭するに臨み
丸善は賞與株券を贈りて
氏の功を表彰せりと云ふ。

明治二十年春(※明治19年[1886]1月11日)
小野梓氏物故すると共に
其經營に成る東洋舘は遂に倒産せんとせしかば、
氏は牟田口元學、藤田茂吉等の諸氏と謀り、
同舘の整理に任じ
之を集成社と改め、
自ら其社長となりて業務の擴張を圖り、
出版業の傍ら外國書籍の直輸入業を開始し、
大(おほい)に其頽勢を挽回するを得たり。

氏が今の商業會議所の前身たる
東京商工會會員として
書籍商組合を代表したるは此時代なり。

次いで明治二十三年(1890)議會開設に當り、
氏は暫らく政治界に入りて奔走し、
集成社の前身東洋舘が
大隈伯に深き關係を有したるを以て
伯の知遇を得、
福島縣の候補者として
初めて逐鹿場裡に打つて出でしも
遂に失敗に了りたり。

此後集成社を閉じて新聞社を創設し、
曩には日曜新聞を起し、
次いで毎朝新聞に更め
前後一年半にして癈刊するに至りぬ。

後ち明治三十六年(1903)三月始めて
福島縣より選出せらるゝに至りたり。
氏は性眞摯にして創始の才に富み、
其人と接するや、
牆壁を設けず、
常に語つて曰く、
友は多きを求めずと、
是れ氏が
『余は多くの無益なる友を有するよりは
 少數有爲なる友を求む』
の主義に依るもの也。

氏の著書中
經財學平權論、
政學原論
最も著はる。
明治四十二年六月 十日印刷
明治四十二年六月十五日發行 定價金拾貳圓
編纂兼發行者 三田商業研究會
       東京市芝區三島町二番地
右代表者   野依秀一
       東京市芝區三島町二番地
印刷者    手塚猛昌
       東京市芝區愛宕町三丁目二番地
印刷所    東洋印刷株式會社
       東京市芝區愛宕町三丁目二番地
發行所    實業之世界社
       東京市芝區三島町二番地
       電話新橋四八〇四番
       振替貯金口座三四三三番
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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blog[小野一雄のルーツ]改訂版
2025年01月01日05:00
《小野梓著》【國憲汎論】東洋館書店 出版:明治18年(1885)
明治十五年七月三十一日版權免許
明治十八年九月    出版
著述兼出版人 小野 梓
       東京府平民
       東京神田區錦町三丁目五番地
發行書肆   東洋館書店
       東京神田區小川町拾番地
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