【水の流れと】大正5年
著者    小野賢一郎 著
出版者   実業の世界社
出版年月日 大正5
p3【水の流れと】大正5年
〔画像〕p3【水の流れと】大正5年

   二、くろかみ
  蚊帳くゞる女は髪に罪深し  太祇
新橋の照葉が大阪の八千代の妹として
南地から出る時には
すべて京好みで京都から髪結ひも呼寄せた

東京はよし町の喜久子が
見習ひ先の京都から歸つて出る時にも
髪結ひを伴れて來た。

新橋の桑島千代、關口ぶん、伊賀とら、
女髪結の繁昌、金庫のかゞやき――
實(げ)に罪深き女よ、
女は髪にまで罪業はあるなれ。

火事の夜、髪の毛が燒けるとて、
姉さんかぶりをして鼻歌うたひ乍ら、
火事を見物してゐた女も見たが
髪の結ひやうが氣に入らぬとて
下谷から日本橋、
日本橋でも駄目の柳橋と、
一日に二回も三回も
車で飛び廻つた女もあつたが――
太祇はうまいことを云ふ。
『水の流れと』奥付
『定價金六十五錢』
大正五年十一月二十五日印刷
大正五年十一月二十八日發行
著 者 小野賢一郎
    東京市麴町區有樂町一丁目四番地
發行者 武井 文夫
    東京市京橋區弓町十三番地
印刷者 武井 万二
    東京市京橋區弓町十三番地
印刷所 千代田印刷株式會社
發行所 實業之世界社
    東京麴町區有樂町一の四
    電話四五一五(營業用)
    本局四五一六(編輯用)
    振替口座東京三四三三番
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