【流転の青春:中国人民解放戦争従軍記】1986
著者    横山甲子蔵 著
出版者   [横山甲子蔵]
出版年月日 1986.4
p1【流転の青春:中国人民解放戦争従軍記】1986
〔画像〕p1【流転の青春:中国人民解放戦争従軍記】1986
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  九江第六陸軍病院
   日本人同志の分散
三度漢口に着いた私たちは各地に分散した。
全土が解放された中国大陸は経済建設と、
軍の正規化、抗美援朝に力を入れていた。

敗戦以来、数年生死を共にしてきた
私たちは肉親のような親しみを持っていた。

中南軍区司令部は私たちを、
それぞれの職務、技能に応じて
必要な部門に分散させた。

装蹄士の技術を持つ平塚要さんは
武昌の獣医処へ、
会計の人たちは経済部門へと分れていった。

医務関係者も湖北病院へ、
或は南昌の医学院へと行く者もあった。

田中民族幹事は漢口に残った。

私は足立(道五郎)先生・太田先生や
そのほか総勢五十名ほどで、
九江の病院へ行かされた。

また長江を船で下って九江に向った。
今度は洪水もなく、
迎えのトラックで病院に着いた。

九江の病院は中南軍区衛生部第六陸軍病院といった。
現在は中国人民解放軍一七一医院となっている。

この病院は旧日本軍の病院で、
俗称 椿部隊と呼んでいたと聞くがさだかではない。

建物は木造平屋建の病棟が六棟、
ほかに手術室・薬局・事務棟・炊事場・工作員病舎
などの附属建物があり、
相当大規模な病院だった。
戦火で破壊されることもなく、
そのまま病院として使用できた。
だが、まだ解放後日も浅くこれから建設の段階だった。

九江の病院にはさきに、
東北に行く際漢口で別れた
橋本萬寿治・佐藤夏美さんが来ていた。
ほかに日本人は七・八名しかいなかった。
私たちが着くと、
院長はじめ病院挙げて大歓迎してくれた。

院長は、「遊全挙」という名前の恰幅のいい、
三十を少しすぎたくらいの
見るからに温厚そうな、
大人(たいじん)の風格をそなえた人だった。

私たちは先生方から順に、
一人一人紹介され握手した。
その日は
一九五〇年(昭和25)十月二十五日であった。
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  病院建設

こうして一九五一年(昭和26)の春ころまでには
一応の体制は整った。
しかし医療面ではやはり日本人の力が大きかった。
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主な陣容は、
副院長・平井出博士、
主治医生・足立(道五郎)先生・太田先生、
眼科主任・栗原先生、
歯科主任・肱川先生、その下には技工士 堤さん、
ほかに高田先生・紺野先生・中村先生、
さらに実習医生・医助数名、

レントゲン室主任・星先生、その下に杉田さん、
病理検査室主任・詫間先生、
その下に平野さん、永井さん、鈴木君。
医務科護士主任・白石さん、(後に猪股士長)
護士長・本池さん。猪股さん・宮村さん・斉藤さん、
文書・岡さん・加藤さん・といった顔ぶれで、
このほか五十名ほどの護士がおり、
医療面の中心になっていた。

男の人で数人工務班の仕事をする者もいた。

  志願兵の負傷兵を迎える
病院の体制が整うと志願軍の負傷兵の
第一陣が送られてきた。
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朝鮮戦線から送られてきた負傷兵のなかに、
どうも日本人らしい顔をした兵士がいた。
傷はそれほど重いようではなかった。
病歴表(カルテ)の名前は『年永貴』と書かれていた。
そして中国語を上手に話したが、
どうみても日本人であった。

彼は名を『年岡冨貴夫』という
立派な日本人であった。

ただ一人で解放軍戦闘部隊に従軍していたため
抗美援朝志願軍に加わり、
北鮮の戦場で傷ついたのであった。

年岡さんは退院後私たちの仲間に加わった。

後の調査ではこのように、
志願軍として朝鮮戦線に従軍した日本人の数は、
三十人とも五十人とも、
或は百人を超えるという情報もあるが、
その数はいまもなお確認されていない。
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流転の青春 横山甲子蔵著
頒 価 4,000円
「流転の青春」
 中国人民解放戦争従軍記
1986年3月30日 印刷
1986年4月15日 発行
著 者 横山甲子蔵
〒399  長野県松本市芳川小屋256-9
    TEL 0263-58-9203
印刷所 中信凸版印刷株式会社
〒390  長野県松本市城西1丁目2-2
    TEL 0263-32-4209
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