【真相 3(7)(19)】1948-06
出版者 鶚出版
出版年月日 1948-06
https://dl.ndl.go.jp/pid/3555910/1/1
宮様商賣一ヵ年を探る
かれらは何をしているか?
(序幕)御紋章入り衣類賣拂いの段
柳の綠に映える銀座の舗道を最近漫歩した人は
スピーカーから流れ出る
こんな聲をきかなかつたろうか。
-銀座の皆樣、久邇樣の久邇香水の
香りゆかしい喫茶室で名曲をお聞き下さい。
-こちらは銀座のナツメでございます。
間斷ないレコードのメロディーとともに
貴族的な女性の聲が尾張町の一角で
そぞろ歩きの客に呼びかける。
ウインドウには「久邇香水直賣所」
のビラが貼つてある。
元宮樣の久邇朝融がはじめた
久邇香水の直賣所たるこの店は、
すでに早く一昨年の八月頃から
インフレの荒波にたえかねた
元華族の御令嗣たちが、
血縁の元妃殿下連中をそろつての内職かせぎ。
古物商として委託販賣にあたる美術部と
特撰の食料品部と高級喫茶部の三つにわかれ、
間口三間奥行十間の小店ながら、
にぎにぎしくも、
いとみやびやかである。
數人の男女店員にまじつて
かいがいしく働く貴婦人は、
松平俊子
(秩父宮妃勢津子の叔母、
李鍵公妃佳子の母親。
戰時中は荒鷲母の會や航空婦人會會長をつとめ、
日本女子專門學校長の敎職を追放された女丈夫)
を筆頭に、
松平幣子(ぬさこ)、松平親子(ちかこ)、
倉橋俊子、加藤新歌子(しかこ)など、
德川、鍋島、毛利系のそうそうたるところが出そろい、
親戚にあたる元竹田宮の光子夫人なども
ときどき店に立つ。
賀陽敏子、閑院直子、伏見朝子などの
元妃殿下はいうにおよばず、
「天皇・皇后以外のほとんど全部の宮樣方が
お成りあそばします。」
(夏目の女主人談)。
しもじもには手にとどかぬ
高價な食料品部、
喫茶部もさりながら、
この店の壓巻は何といつても
美術部の衣類の委托。
中央の「衣類受入口」で、
金砂を召してお化粧も濃い
「松平の奥樣」方が、
次々と持ちこまれる
きらびやかなお召類の品定め、
お家流の水莖のあとも
うるわしく記帳あそばす。
ウインドウにならぶ衣類、
身の廻り品などすべて
「上ツ方のタンスの底に鎭座していた御品々」。
はじめは妹連中を通して
衣類などを賣りに出した皇族も、
最近は「御自身お出かけ」になり、
德川のアオイの紋のとなりに
菊の紋章がならんでいる。
ここの店主は夏目タツ
(三田の土地建物、金融業、
夏目合名會社社長、不動産協會理事、
夏目喜次郎の細君、
女子美術を出てから
學校關係の金融相談を
やつていた女金貸)、
松平俊子との關係から
前記一連の婦人たちと働くことになつたが、
もつぱら「上ツ方」や「天下の財閥」の
御歷々を對象にすこぶる盛況。
昨年度の所得一五〇萬圓以上、
一カ月の賣上げは一〇〇萬圓を下らぬ
(京橋税務署しらべ)
最近は宮家御用達で古くから有名な
赤坂山王の「有職ずし」の
委託加工もはじめるとか。
ついでながらここに働く女店員は、
ほとんどが夏目の自宅を寮に、
食事付でやとわれて、
朝は十時から夜は十一時まで、
休憩なしの働きずめ、
今樣女貫一タツさんは
どうやら勞働基準法など
御存知ないようである。
(第一幕)御愛妾ミス日本召抱えの段
https://dl.ndl.go.jp/pid/3555910/1/4
一九四八年六月一日 發行
眞相(第三巻第七號 通巻第十九號)
定價 三十圓
送料 一圓
半年概算 百八十圓
編集 發行人 佐和慶太郎
印刷所 日本印刷工業株式會社
發行所 人民社
東京都中央區銀座西二ノ三
電話 京橋(56)〇四六四番
振替 東京一一五二一一番
https://dl.ndl.go.jp/pid/3555910/1/20
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