《植民地時代と今日の台湾の比較》4/4
奇美実業 許文龍 董事長:1998年(平成10年)3月6日
才からほとんどの時間を
釣り、音楽、絵、読書に費やしています。
うちの会社の事に戻りますが、
私達は様々な方法でコストダウンをはかり、
気が付いたら、
世界一になっていました。
現在うちのキャパが100万トンですけれども、
100万トンというのは
アメリカ大手三社の総生産量を併せて
だいたい100万トンです。
日本のメーカーは10社あるんですけれども、
これも全部併せて90~100万トン近くだと思います。
一つの会社の生産量として、うちは世界一です。
今までは順調に発展してきましたが、
去年当たりから
韓国のコストを無視した安売りが始まって、
一時かなり苦しい状態に陥りました。
幸い現在は小康状態を維持しています。
先ほど申し上げましたように、
私は現在仕事の事よりも
儲けたお金をどう使うかが重要な事になっております。
それで考えた事はまず病院をつくりましょうという事で、
台南に南部で一番大きい1,200ベッドの病院を作りました。
その次に、文化を如何に向上させるかを考えました。
今日の台湾は確かに豊かになりましたが、
文化の面ではちょっと遅れています。
蒋介石はかつてナショナリズムから
中華文化を復興しようと唱えていましたが、
私に言わせれば、
中華固有の文化はほとんどないと思います。
現在いわゆる中原文化も
中央アジアから伝来した文化が主体だと思います。
私が強調したいのは、
国際文化の大切さです。
私はまず絵の収集を始めました。
私が絵を収集する時は絶対作者の名前を先に聞きません。
それに、難しい絵、誰が見ても分からない絵は買いません。
写実的な手法で書かれた絵、
特に19世紀の技術の爛熟した作品というのは
すばらしいと思います。
全世界の人が印象派、ネオ印象派ブームで浮かれている時、
私は全く違う19世紀の絵に注目し、
大量に購入しました。
もう一つのコレクションはバイオリンですが、
若い音楽家の育成のために、
貸し出しも行っています。
もう一つのコレクションは武器です。
私は昔から日本刀が好きで、
日本刀のすばらしさに魅せられています。
日本刀は外観が美しく、
切れ味の鋭さもその他の民族の刀より
格段にいいと思います。
従って、
私は日本の国宝級の刀をかなり集めています。
それから、
昭和初期に台南市に素晴しい
歴史博物館と自然史博物館がありましたが、
私は子どもの頃歴史博物館に行くのが好きで、
特に動物の標本を見るのを楽しみによく通っていました。
しかしこれらの博物館は戦争中に焼けてしまいまして、
戦後になって、
所蔵品は散らばってしまい、
現在台南には博物館がないのです。
動物標本に関して、
うちのコレクションは
幅の広さ及び数の多さにおいては恐
p14〔らくアジア一だと思います。〕
らくアジア一だと思います。
世界の動物を何千点と集めていますが、
私は世界で有名な剥製業者及びハンターを通じて、
毎年世界各地から標本を集めており、
かなりの数になります。
また、楽器の博物館を作りたいと思っています。
昔からある色々な楽器を集めて、
その発展過程を紹介したいと思います。
私は現在一番幸せに思っているのは、
稼いだお金の使い道がはっきりしてきた事です。
これは非常に楽しい事です。
台湾ではお金持ちが多いが、
お金というのは一種の原料だと思います。
使って初めて製品になります。
私はその製品をたくさん持っています。
従って、お金があるだけではなく、
私はお金を使う楽しみも同時に持っています。
当然ながら、
そうなると子供にどれだけお金を残すか
という事になりますが、
残念ながら、私は子供にお金を残さないつもりです。
残してもしょうがないと思いますし、
彼等にとっても大きな負担になると思います。
やはりお金のない人が自分の力で家を買ったという
楽しみは生涯忘れないと思います。
私もそうでしたが、
自分のお金で
マイホームを買った時の感動は一生忘れません。
また、結婚の費用も自分で貯めました。
私の場合30才で結婚しましたが、
その時代ではかなり晩婚の方でした。
自分で稼いだお金でもって奥さんをもらうとか、
家を建てるというのは非常に楽しい事です。
現在の親は子供に対して過保護になりがちであり、
子供の教育から結婚まで全てお世話したがりますが、
そうする事は
自分自身の力で何かを成し遂げるという楽しみを
子供から奪っていると思います。
従って、私は子供にあまりお金を残さないつもりです。
子供に自分の力で何かを成し遂げた時の
満足感を味わってほしいと思います。
以上で私の講演を終わらせていただきます。
ご静聴ありがとうございました。
《奇美実業、董事長、許文龍》
*総統府国策顧問:講演会・平成10年
演題「植民地時代と今日の台湾の比較」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇