【近代日本の家庭 (市民新書)】昭和41年(1966)
著者 外崎光広 著
出版者 高知市立市民図書館
出版年月日 1966
自由民権期の家庭改革論
次に、明確な「家」の廃止論は、
明治一四年(1881)にはじめて登場する。
雑誌「法律志叢」がこの年に連載した
「相続論」のなかの
「社会ノ組織ハ一箇人ヨリ成立ツ者ナルヲ以テ
一箇人ノ性質完全ナルトキハ
一社会ノ体面モ自ラ善良ナルヘシ
之ニ反シテ一家ヲ本トスルモノハ
其外形ハ美ナリト雖トモ
其内部或ハ醜穢不規見ルニ忍ヒサルモノアリ」
(一一月二七日発行第八一号)
との一節こそ、
「家」廃止の先駆的主張であるが、
「家」の廃止を説いたこの筆者が
家長(戸主)の廃止論者でもあった。
なお、「家」廃止や家長(戸主)の廃止論者として
小野梓をあげなければならない。
明治四年(※明治5年)から四年間
米英に留学し、
当時のもっともすぐれた
法学者の一人であった小野梓は、
「民法の骨」のなかで、
「一国の基礎を一団の家族に取る非」
を明らかにした上で、
https://dl.ndl.go.jp/pid/3029699/1/15
戸主の制のもとでは、
家族は既に成年に達して
自治能力を持っていても、
なお戸主の
「統御を免るゝを得ざれば、
内に自から不満の心を抱き、
家庭の交通依て以て和同せざるべく、
又之にして自主たるを得ず、
随て其労力の結果を自得するを得ざれば、
其所有の権利自から鞏固ならず、
遂に其力を生業に用ゐるの意を薄からしむ」
るものであり、
したがって、
「戸主の制は人間交際の宜しきを失し、
生民経済の術に背く」
ということで、
戸主制に廃止を力説した。
小野は明治一七年(1884)に単行本として出版した、
「民法の骨」の「引言」のなかで、
「此書は明治八年(1875)其筆を始むと雖も、
中ごろ国憲汎論の著作に際し之を止め、
十五年(1882)汎論の書成るや又之を続ぎ、
近日漸く其の稿を落成す」
といっているから、
彼の「家」廃止論や家長廃止論は、
さきの「法律志叢」の「相続論」に
先立つ労作だったかとも考えられる。
https://dl.ndl.go.jp/pid/3029699/1/16
外崎光広
1920年に生れる
1951年同志社大学法学部法律学科卒業
1953年同志社大学大学院にて法学修士
近代日本の家庭 市民新書19
昭和41年8月25日印刷
昭和41年9月1日発行 定価230円
著 者 外崎光広
発行者 渡辺 進
印刷者 有限会社 土電印刷
発行所 高知市立市民図書舘
高知市帯屋町
振替徳島15276
電話②2501
https://dl.ndl.go.jp/pid/3029699/1/102
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