【日本醸造協会雑誌 =
Journal of the Brewing Society of Japan 31(12)】
著者 日本醸造協会 編
出版者 日本醸造協会
出版年月日 1936-12
https://dl.ndl.go.jp/pid/1752920/1/1
牡丹江の日本酒狀況 奉天 坂本隆之助
平和郷古北口を辭し、
萬里の長城におさらばを告げ、
軍用トラツクの運轉臺に便乘して
山河の惡路を五時間ヘトヘトになつて
承德に着いたのは午後七時。
八月中の日の永い節であつたが
茲は四方山を以て圍まれて居るので
日の暮るゝが早い。
街にはポツポツ灯が付いて居つた。
晩は酒保の娯樂室の一室に
夜具等を準備して置いて呉れたので
ゆつくり足を延して休んだ。
關東軍酒保では滿洲事變の平時化と共に
兵隊の足止め策と風氣矯正の爲め
旅團以上の集團都市には
衞戍地酒保を開設する事になり
此 承德にも最近出來たばかり
卽ち酒は勿論内地一流の
菊、櫻、月桂、澤ノ鶴、白鹿等を
銚子一本二十錢
ビール三十錢
肴は一皿十五錢均一とし
別に女給仕のサービス料として
一割を取るが
夫でも市價の三分の上で遊べると云ふ仕掛け
其他
ピンポン、撞球、碁、將棋等は無料で
夜十二時迄開放する事になつて居るが
時節が暑い盛りの爲でもあらうが
餘り成績は芳しからぬ樣である。
-略-
https://dl.ndl.go.jp/pid/1752920/1/19
樽酒の火が來て居るのは九十樽程あつたが
玆にも一升瓶詰の火落酒があつたが同じ箱の内で
眞白くなつた物と稍々異色になつた物と
全然色澤に異狀の無い物と色々あるので
之は全部開梱し上中下三段に區別し
下の物は廢棄する事にし
他の物は手入する事にしたが
元來非常に甘口でウマい酒である爲
結果は良好であつた
只此程度が種々あるのは
殺菌溫度の關係では無いかと思はれた。
扨手入の場所であるが
何分建物はなし設備は勿論無し
色々研究の結果
幸ひ支庫より五丁程の處に
弓鷹(ユミタカ)と云ふ
酒屋があるので交渉したら
早速承諾して呉れたので其翌日より
毎日其倉に出張して監督する事にした
元來北滿地方は水は惡く
哈爾濱 牡丹江等は有名の惡水地であるが
此 弓鷹釀造元
中西(政太郎)君の地域一帶約五百米四方は
全く別地の如く滿鐵病院の分析表もあつたが
硬度が三・六度
鹽分は少し不足だが
アンモニア、亞庇酸、鐵分等
更に無く
量に於ても少しも不足は無い
隣家の井戸の水は全町に渉りて賣られて居る
全く天祐とも稱すべき萬金の價値がある
中西(政太郎)君は北海道小樽の人で
元 圖們で酒造をやつて居つたが
將來を見越し
昨年(昭和10年)より始めて造つたので
未だ設備も充分でなし
水 氣候等に對しても杜氏が自信を得ぬので
奉天の酒とは比較にならぬが
火落一本も無いし殊に四段仕込の物などは
相當の物である
只原料米が地米の精白を使用したので
遺憾の點がある
(中西政太郎)氏は在郷軍人分會の幹部にして
其他社會公共の事業には
率先肌を脱ぐ人にして
事業も着實穏健
必ず金持ちになるタイプの人である
其他 凱歌と云ふ酒と
牡丹江正宗と云ふのがあるが
水が全然惡いので第一
色が濃厚で問題にならない。
-略-
https://dl.ndl.go.jp/pid/1752920/1/20
昭和十一年十二月十一日印刷(毎月一回)
昭和十一年十二月十五日發行(十五日發行)
定價金四拾五錢
著作兼 日本釀造協會
發行者 東京市瀧野川區瀧野川町九七
電話 小石川 三三八番 二〇四九番
王子 二六〇〇番
右代表者 濱田 德海
東京市瀧野川區瀧野川町
釀造試驗所官舎
發行所 日本釀造協會
印刷者 早坂善太郎
東京市牛込區榎町七番地
印刷所 大日本印刷株式會社
榎町工場
東京市牛込區榎町七番地
廣告一手 新廣社 齋藤米四郎
取扱所 東京市牛込區柳町廿四番地
電話牛込(34)二、一一三番
振替口座東京八〇五二五番
本會支部振替貯金口座番號
-略-
https://dl.ndl.go.jp/pid/1752920/1/64
図書館・個人送信資料利用可 ログイン中【小野一雄】
【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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