[チャー坊遺稿集]

[破壊]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[破壊]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[破壊] p142-143

君の瞳の中にゆうれいを見た
ゆうれいは君を見守っているにちがいない
君の瞳の中に涙を見た
ああ これも幻影なのか
紅の夢 幻影
LSD LSD LSD LSD

紅の夢 幻影

もう何ヶ月も美しい三日月の月光を待っているんだ

石の上を歩く ただ歩くきずだらけでも石の上を歩く
せつなくさびしい だが石の上を歩く 石の上に座る
石の上に眠る

部屋には物影 夜空には月影 そして全ては幻影

 ※破壊
  チャー坊は月を眺めることを好んでいた。
『チャー坊遺稿集』p142-143破壊
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p142-143破壊
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
発行所 株式会社 飛鳥新社
    東京都千代田区神田神保町3-10
    神田第3アメレックスビル
    電話 (営業)03-3263-7770
       (編集)03-3263-7773
    〒101-0051
印刷・製本 日経印刷株式会社
定価(本体3,500円+税)
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[(無題)革命の炎]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[(無題)革命の炎]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[(無題)革命の炎] p140-141

おれたちの世代をこえて
革命の炎がもえるんだ
おれたちの苦しみはその日がくるまで
がんばるんだ
ああ レボルシオン
LSDをのんだことあるかい
自己批判をしたことあるかい
LSDは心理革命
自己批判は夕焼をよぶ
ああ LSD

壁に飛びちる血しぶきで
革命とつづる
おれたちの楽しみはその日がくるのを
待つことだけさ
ああ レボルシオン
『チャー坊遺稿集』p140-141(無題)革命の炎
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p140-141(無題)革命の炎
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
発行所 株式会社 飛鳥新社
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[薬屋][裏の楽屋]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[薬屋][裏の楽屋]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[薬屋] p120-121

ひとり うるよごれて 街の灯 ながむる

今日も流されて流されて
今日も薬とたわむれて
黒バラのトゲにささりつつ
不思議な不思議な夜

ひとり うるよごれて 街の灯 ながむる

悲しい少女
雪の調べ
思い出の少女
悲しい瞳の子

夢見ることだけを全てと思ってきたが

今 その夢が消えてゆく
裏の楽屋でよいしれて
あかりろうそく屋根裏
画像に見える壁
不思議な不思議な夜(街)
『チャー坊遺稿集』p120-121薬屋
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p120-121薬屋

[裏の楽屋] p122-123

ひとり うるよごれて 街の灯 ながむる(ひとり)

裏の楽屋でよいしれて
今日も薬とたわむれて
あなたにおくる黒ばら
不思議なふしぎな夜

ひとり(ひとり)うるよごれて 街のあかり ながむる

今日も流されて流されて
あかりろうそく屋根裏
黒バラのとげがささりつつ
夢見る思い

夢見ることだけを全てと思ってきたが

今 その夢が消えてゆく

ひとり うるよごれて 街の灯 ながむる

まどからみえるえんとつそらや
洗いざらしの灰皿数個
明日は薬をやめようか!
びろうどの不思議な夜(不思議なびろうどの夜)

夢見ることだけを全てと思ってきたが
今 その夢が消えてゆく

ひとり うるよごれて 街の灯 ながむる

 ※薬屋(前頁参照)
 ※裏の楽屋
  一応、ドラッグの詩と読むこともできるが、
  晩年の心境を謳った詩。
  晩年、部屋でよく歌っていた詩の一つ。
『チャー坊遺稿集』p122-123裏の楽屋
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p122-123裏の楽屋
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
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[Red Letter(思想犯の手紙)]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[Red Letter(思想犯の手紙)]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[Red Letter(思想犯の手紙)] p110-111

帰りたい君の住む家へ
なんて遠くまできちまったんだろう
はやく はやくたどりつきたい

君の住む家へ帰りたい
あなたを愛してるから
今 赤い手紙を書いている

今から海を見に行くんだ
流れ星を見たことあるかい
何かいい事があるぜ

思想犯の手紙 悲しい手紙だぜ
ガンバレ赤軍 赤い星 人は殺すな
東大闘争の人たち覚えているかい

銀色の涙を流す老母よ 元気をだすんだ
銀色の涙を流す老母よ 海は近い
今 赤い手紙を書いている

帰りたいあなたの住む家へ
もう帰れないのだろうか
はやくはやく帰りたい

 ※Red Letter(前頁参照)
  Red Letter(思想犯の手紙)
  東大闘争の人々、北朝鮮に渡った赤軍兵士に送る詩。
  七九年のライヴで初めて演奏された。
  英語バージョンで歌われた。
  その英語バージョンの詩は今回、
  発見することができなかったが、
  ステファニーの友人ピーター(学者? 詳細不明)が
  英語に翻訳したという。
『チャー坊遺稿集』p110-111 Red Letter(思想犯の手紙)
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p110-111 Red Letter(思想犯の手紙)
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
発行所 株式会社 飛鳥新社
    東京都千代田区神田神保町3-10
    神田第3アメレックスビル
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[Red Letter]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[Red Letter]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[Red Letter] p108-109

帰りたいあなたの住む家へ
なんて遠くまできちまったんだろう
はやくはやくたどりつきたい
愛するあなたの家へ赤い手紙を書いている
はやく帰りたい

もし仲間が死んでもガンバレ赤軍 人は殺すな
今から海を見に行く 流れ星を見たことあるかい
何かいい事あるぜ ここに赤い手紙を書くぜ
銀色の涙をながす老母よ もうすぐ海だ
少年は泣いているよ
老母よがんばれ 元気をだすんだ おばあさん

今 赤い手紙を書いている

思想犯の手紙 こんな悲しい手紙あるものなのか
東大闘争の人たち覚えているかい
赤い星 今 赤い手紙を書いている
まぶたをこすりながら

今から海を見にゆくんだ 流れ星を見たことあるかい
何かいい事あるぜ

帰りたいあなたの住む家へ
なんて遠くまできちまったんだろう
はやくたどりつきたい
今 赤い手紙を書いている 思想犯の手紙
東大闘争の人たち覚えているかい
赤い星 悲しい手紙 仲間が死んでも
赤い手紙を書いている

今から海を見にゆくんだ 流れ星を見たことあるかい
何かいい事あるぜ
『チャー坊遺稿集』p108-109Red Letter
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p108-109Red Letter
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
発行所 株式会社 飛鳥新社
    東京都千代田区神田神保町3-10
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[Black Guitar]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[Black Guitar]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[Black Guitar] p100-101

ヘイ…Black Guitar
ヘイ…Black Guitar
むなしい愛 せつない愛

むなしいBlues ぎらぎらR&B

ヘイ…DownBeat
ヘイ…Bluenote
New Yorkの思い出

悲しいStreet 悲しい街
New Yorkの灯
Streetのバイオリン

ヘイ…CocaCola
ヘイ…ヘロイン
地獄針の苦しみ
Blues Blues Black Guitar
『チャー坊遺稿集』p100-101Black Guitar
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p100-101Black Guitar
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
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[石けり][貧しき眠り]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[石けり][貧しき眠り]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

[石けり] p76-77

びんぼう人の子供には何も出来ぬ事ばかり
てんじょうみつめてただひとり
口びるかみながら ふとんの中で

いたずらな子供たち何を思う
母を泣かせて べそかいて
夕暮ひとり ただ石けり

きずだらけでどろだらけ
ああ石けり

ひねくれた大人たち何を思う
おれはひとりただ生きて
夢見る思い 眠りの中で

きずだらけでどろだらけ
ああ眠りの中で

思いいずるふるさと山や川
がきの頃はあそんだ隠れ家や
帰ってみれば ああなつかし

きずだらけでどろだらけ
ああ石けり

 ※石けり
  詩中「思いいずるふるさと」とは
  子供の頃よく遊んだ稲荷山(京都市伏見区)を回想し、
  書かれている。
  晩年、部屋でよく歌っていた詩。
『チャー坊遺稿集』p76-77石けり
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p76-77石けり

[貧しき眠り] p78-79

貧しき眠りの床につき
ひねくれた大人たち何を思う
びんぼう人の子供には何も出来ぬ事ばかり
天上見上げてただ一人
口びるかみながら眠りの中で

キズだらけでドロだらけ田舎道を

いたずらな子供たち何を思う
母を泣かせてべそかいて
夕暮 ひとり ただ石けり

石だらけの凸凹道を裸足で歩く

思いいずるふる里 山や川

異国の空でなつかしや
思い出 遠きふる里

キズだらけでドロだらけ田舎道を

 ※貧しき眠り
  前頁「石けり」の草稿的作品
『チャー坊遺稿集』p78-79貧しき眠り
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p78-79貧しき眠り
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
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目次『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

目次『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

『チャー坊遺稿集』写真1
〔画像〕『チャー坊遺稿集』写真1

『チャー坊遺稿集』写真2
〔画像〕『チャー坊遺稿集』写真2

『チャー坊遺稿集』目次1
〔画像〕『チャー坊遺稿集』目次1

『チャー坊遺稿集』目次2
〔画像〕『チャー坊遺稿集』目次2

『チャー坊遺稿集』目次3
〔画像〕『チャー坊遺稿集』目次3
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
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「村八分」ものがたり 藤枝静樹『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

「村八分」ものがたり 藤枝静樹『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

 『チャー坊遺稿集』中表紙
〔画像〕『チャー坊遺稿集』中表紙

「村八分」ものがたり 藤枝静樹 p350-353
     「ヤングギター」七三年九月号

 一九七〇年七月二六日、富士急ハイランドで行われた
<ロック・イン・ハイランド>のイベントに
バーズ・パーティーとして参加した僕は、
京都からやって来た「裸のラリーズ」と名のる
とても不思議なバンドに出会った。

 この年はウッドストックの映画が公開されたり、
ストーンズが来ると言われた富士オデッセイが企画されたりして、
ロック・フェスティバルは常にマスコミに話題をまいていた。
この<ロック・イン・ハイランド>も、
その当時の日本の代表バンドを網羅し、
スタッフ、機材も最高の部類を集めて
かなり前からマスコミの間で騒がれていたにもかかわらず、
さて幕を開けてみると、
バンド関係、報道関係をのぞくと真の観客は一〇〇人位しかおらず、
関係者はあ然としていた。

日本版ウッドストックと前評判を聞いてドッと押しかけた報道陣は、
このイベントの不成功はともかくとして
取材をしなければいけないので、
ちょっとした事が起こるといつもカメラマンの山ができて、
アマチュア写真家の撮影会みたいな雰囲気になっていた。

 ちょうど「裸のラリーズ」が出て来て
「ギミー・シェルター」を演奏し始めた時、
案の定この人だかりができてしまった。
よせばいいのにその中の一人がカメラを持って
ステージに上がっていき写真を撮り始めた。
その時である、
ステージの隅で踊りを踊っていた不思議な奴が
そのカメラマンに向かって激しいケリを入れた。
それに合わすように曲はブレイクして
「ミッドナイト・ランブラー」のブレイクに代り、
カメラマンは鼻血を出しながらステージの上から転げ落ちていった。

その事を遠巻きに見ていた僕はスゴイ奴が現われたと思い、
走ってステージのまん前まで行き、その男をみつめた。

近くによってみると、
濃いグレーのシャツにすり切れたようなジーパンをはき、
その上から夏だというのに穴の開いたロング・ブーツをはき、
八百屋の前かけをつけて
胸まで伸ばした長髪をゆらしながら踊っており、
かなり異様に見えた。

僕はその男に釘付けされたように見つめた。
そいつはボーカル担当らしいのに
時たまワンフレーズを歌うだけで、
後はずっとミック・ジャガーばりの踊りを
一時間のステージ中踊り続けていた。

これは本格的なロック・バンドになるなと思い、
ステージが終わってからたずねると
「裸のラリーズ」の水谷孝がセッション・メンバーとしてバックに
山口冨士夫グループをたのんだという事である。
あの踊っていた奴はと聞くと、
チャー坊というサンフランシスコから帰ってきた奴だという。

その三ヵ月位前、日比谷の野音で
成毛滋のオルガン、
つのだひろのドラム、
石川恵(現、ファー・ラウト)のベース、
それに山口冨士夫のギターをバックにデビューして、
その時も歌わないでずっと踊り続けていたという。
そしてその踊りの途中に成毛の処へいって、
「あんた、いえてへんわ。」と、言った話を聞き、
真にロックの判る奴が現れたなと思った。

 その後九月に日比谷の野音に
山口冨士夫グループが出るというので観に行ったが、
何かの理由で出なかったので、
ガックリして帰って来たのも覚えている。

それから二、三週間たってチャー坊が鹿沼で
大麻不法所持現行犯で捕まったのを週刊誌で読み、
僕の予想を越えるミュージシャンが現れたのだと
あらためておもった。
そしてその保釈後、
「しゃばはええで。」と帰ってきたチャー坊は、
冨士夫と一緒に「村八分」という
ツイン・リードギターのバンドを結成した。

 それから三年たとうとする今、
やっと待望の「村八分」のLPが二枚組ライブで発売された。
やっとの事でレコードを買って針を下ろしてみる。
あの「村八分」が出てくる時の外国グループ以上に
ワクワクくるあの感じを思い出しながら
目をつぶって待っていると、
何と聞こえてくる拍手の音はパタパタと迫力のない音、
これはやばいなと思いパッと目をひらいて聞いてみる。

冨士夫のチューニングの音が聞こえてくる。
いつもと違う、こんな音じゃない。
ロックを判っていたら
こんなレベルでロク音しないはずなのにと思う。
そんな事を考えているうちに一曲目が始ってしまい、
音に疑問をいだきながら
「村八分」の演奏に聞き入ってしまった。
やはり演奏は裏切らないで迫ってくる。
これだけの事を彼等はやっているのだから、
もっとましな
『チャー坊遺稿集』p350-351「村八分」ものがたり-1
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p350-351「村八分」ものがたり-1

ロク音の仕方もあるだろうと
くやまれてならない。
今度の二枚組は、ブートレッグ・レコードと思って
「村八分」の男グルーピーは次のLPの発売を待っている。
           (ふじえだ・しずき 映像作家)
『チャー坊遺稿集』p352「村八分」ものがたり-2
〔画像〕『チャー坊遺稿集』p352「村八分」ものがたり-2
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
著 者 柴田和志
発行者 土井尚道
発行所 株式会社 飛鳥新社
    東京都千代田区神田神保町3-10
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[幻影]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

[幻影]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志

『チャー坊遺稿集』飛鳥新社
 平成14年(2002)12月18日 初版発行

[幻影] p144-145

呪いの祭りを始めよう
わら人形打ちつけて
首吊の木にわら人形
祭りの炎もやしつつ

紅の夢 もえる海

ギリ ギリの骨
骨だけのカギ

星降る夜の森の泉
戦いののろしを今あげよう
明日もわからない命かも
呪われたオレたちに明日は無い
ああ いつの日か さようなら

今日限りかも
今を生きよう

幻の命 君に捧げ
幻覚の赤い空 自覚して
幻影の盾に光る星
現実におこる肉体の影
血しぶき 紅の夢 満月

影を写すかべ
時を待つ音
夢見る
まさ夢を見た

 ※幻影
 「あやつり人形」「呪いの祭」を更に改稿した詩。
  晩年、この詩にはメロディーが付き、部屋で歌っていたという
p144[幻影]
〔画像〕p144[幻影]
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『チャー坊遺稿集』『1950~1994』
二〇〇二年一二月一八日 初版発行
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blog[小野一雄のルーツ]改訂版
2016年12月22日 10:09 ◆柴田和志 [チャー坊遺稿集]
[幻影]『チャー坊遺稿集』著者・柴田和志
[幻影]p114
幻影  夢 幻のごとく  紅の夢
幻影  夢 幻のごとく  幻の詩
狂詩  狂いそう  精神病院  第二病棟
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