【支那事変と思想戦】〔8/8〕内閣情報部長 横溝光暉氏述・昭和14年
【支那事変と思想戦】
(八)結 論 p19-20/22
ソヴイエト・ロシアは昔から之に對して
此處にお集りの皆樣は思想戰の舞臺に活躍する
戰士の養成者とも申すべき方々であると私は存じますが、
何として に於ては訓練されたる思想戰の部隊と
整備された思想戰の參謀本部が必要であらうと思ふ。
世界大戰の經驗は此思想戰の重要性に眼を開かせました。
從ひまして之に對して力を非常に注ぐやうになりました。
ソヴイエト・ロシアは昔から之に對して
專門的なる敎育訓練を施して居る位でありますが、
伊太利、獨逸に於ては中樞機關として
何れも宣傳省を造りました、
獨逸の宣傳省の如きは是は
ヒツトラーの世界大戰に於ける所の體驗が
物を云つて造つたものであります。
ヒツトラーは宣傳なるものゝ性質を
眞に會得した人の手に掛つたら
恐るべきものだと
自身述懐されて居るのでありまして
そこで獨逸に於ては宣傳省が
出來上つて居るのであります。
其他の國に於ても宣傳省こそありませぬが、
思想戰に於ける機構の整備運營の適切を
企圖致して居るのであります。
我國に於ては從來餘り關心を持つて居りませんでしたが、
滿洲事變に際し、
更に今回の事變にぶつかつて見ますると、
思想戰と云ふものゝ重要さが
ハツキリ解つて來たのであります、
恰もラヂオが娯樂機關のみと思つて居つたのが、
今日では思想戰上重要なる武器である
と云ふことが解つて來たと同樣に、
思想戰と云ふものに
段々注意を向けて來るやうになつたのは
非常に注目すべきことだと思ひます。
私は微力ながら
此方面に職を奉じて居るのでありますが、
思想戰の重要なるに鑑み、
甚だ乏しきを顧みて忸怩たるものが
あるのでありますが、
我が國の思想戰に關する
行政組織乃至運用と云ふものは、
今後の思想戰に備へて更に十分なる考慮を
必要とするものと思ひます。
而して今後來るべき思想戰に打勝たなければ
ならないと思ふのであります。
時局は極めて重大でありまして、
所謂更生新支那の育成と云ふことに付きましては、
今後吾々の爲すべき所は非常に大きいのであります。
―略―〔画像〕【支那事変と思想戦】p19
昭和十四年二月 十日印刷
昭和十四年二月廿五日發行(非賣品)
編輯兼 熊本市城見町一番地
發行者 熊本中央放送局
代表者 永松善次
印刷所 熊本市紺屋今町四一番地
合名會社 博文舎印刷所
印刷者 右 同 所
角 安次郎
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【 】『国立国会図書館デジタルコレクション』
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