「ノーベル経済学賞」(注1)①
[附 章 経営計画とリニヤー・プログラミング]別府祐弘:4/4
[附 章 経営計画とリニヤー・プログラミング]別府祐弘:4/4
附 章 経営計画とリニヤー・プログラミング p285
五 結 p326-327
本章のテーマは、L・Pモデルに立脚する新しい生産理論の特質を、
伝統的理論と比較検討しながら経営経済学的に究明し、
経営計画に対する実践的意義を確かめることであった。
けれども両理論の基本的な内容を検討して来た現在、
われわれは、これらの間に横たわる数々の差異が対立するものではなく、
むしろ並存するといわざるをえない。
すなわちこの新しい理論項目は、
伝統的生産理論の理論的正当性をなんら否定してはいないし、
そこに見出される教訓的な価値を制約するものでもない。
したがってわれわれが観察して来たところのものは、
生産理論における一つの革命というよりは、
むしろそれを深め、拡張したものと考えられる。
また、旧理論が最適条件下における生産事象を観察するという意味では、
それは新理論の特殊ケースであると理解することもできよう。
しかし他方、この新しい生産理論は、近年殊に経営経済的な観点から、
伝統的理論に対して繰り返し投げかけられて来た批判点の正当性を、
われわれにあらためて確認させた。
つまり、
複雑多岐な大規模工業生産事象が現代の代表的な生産形態となるにおよんで、
旧理論の中心的な基礎である収益法則は、
そこに設定されている前提条件においても、
その理論的発言内容においても非現実的なものとなり、
したがってまた、
経営実践に対してはとうてい適用することができなくなってしまったのである。
まことに経済条件は絶え間ない変動と発展を繰り返しており、
各々の世代は、
その世代固有の問題には独自の方法をもって対処して行かなければならないであろう。
そしてそのかぎりにおいては、
われわれの祖先からの遺産は、
もはや時代遅れになったと考えられるのである。
まことにわれわれの時代に、L・Pのような新しい考え方が生み出され、
しかも、それが極めて短期間のうちに経済理論の中に
うまく据えつけられて来たということは、
近年における経済研究に、
なんらかの活気がある証拠であろう。
生産理論においては、
現代の生産事象をより現実的に把握し、
同時にまた、経営指導に対して指揮と統制のための
有用な基礎を提供せんとした結果、
L・P(一般にオペレーションズ・リサーチ)は、
これまで解明されえなかったような新しい分野を切り開いたのである。
今や、現代企業の経営担当者としては、
経営計画の設定にあたって、
この新しい理論的用具に、
十分注目しなければならない時期に直面しているものと思われる。
(別 府 祐 弘)
昭和38年1月10日 初版発行
昭和38年4月10日 3版発行 略称―経営計画
編 者 © 古川栄一
発行者 同文舘出版株式会社
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「ノーベル経済学賞」(注1)①補
ゲルト・ラスマン著『生産函数――経営費用理論に対する意義』
別府祐弘
PDF:「ノーベル経済学賞」(注1)①補-別府祐弘
PDF:「ノーベル経済学賞」(注1)①補-別府祐弘
(一橋大学大学院学生)
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