【Sai = 사이 = サイ 23】1997-06
著者 『Sai』編集委員会 編
出版者 在日コリアン・
マイノリティー人権研究センター
出版年月日 1997-06
在日こそ、プラス思考で大きな仕事ができる
(株)日之出書房
郭日出(クァク イチョル)さん
礼儀・信義には気を遣った
日本で最初に在日朝鮮人二世として
古書籍商業組合に加入した郭日出さん。
二一年前のことである。
「古本屋というのは自分で研究して拡大するという
個人の力が大きい商売だから、
保守的な体質にならざるを得ない。
そこに初めての在日朝鮮人で、
しかも初めてのチリ紙交換出身の僕が入った。
業界の方もずいぶん、
戸惑いがあったようです」
しかし、否と言わせない郭さんの人間性があった。
「人間の品性という点では、
人の二倍も三倍も気遣いました」
また、仕事にかける情熱も並ではなかったようだ。
大阪の古本屋の先達の多くは、
夜本屋から出発して店を構えたが、
郭さんは四〇代としての最後の経験者だった。
その夜本屋とは、
夜店などに古本を並べて商売するもので、
常に天候との闘いであった。
「いちばんの思い出は、
突風とどしゃぶりの雨のなかで、
妻と二人で本にシートをかぶせ、
真っ暗な中、
雨がやむのを待ち続けました。
家で一人で眠っている長男を心配しながら。
雨がやんだのが午前一時半ごろでしたね」
夜本屋を続けながら、
早く自分の店を持ちたいと
がむしゃらに働いた。
それが、業界内に
”大阪にスゴイ奴があらわれた“
といわしめた。
次代を育てるシンクタンクを
「七年前に東京で在日の古本業者が
除名された事件があったんです。
業者しか参加できない古本市に彼も行き、
受付の人に業者かどうかと聞かれた。
彼は“いつも来ているのに”と怒り、
あげくのはては激昂して手を出してしまった……。
それを聞いて僕はとてもショックでした。
次に加入する在日が
どれだけ肩身の狭い思いをするか。
小さなミスを拡大解釈して
朝鮮人差別に結びつけるなんて。
民族性以前に社会の適応力が問われます」
郭さんがいちばん言いたいのは
三世、四世の人材を育成する
シンクタンクの必要性。
「二世は自分たちの苦労や恨みを
次代に受け継がせてはいけない。
深い愛情と経験を三世たちに伝え、
日本社会との付き合い方を
学ばせなければならない」
日本社会の知識がなければ、
相手にされない。
その事実を二世たちは認識してほしいと。
「在日は日本も韓国も乗り越える
大きな芽を持っていると思うんです。
そんなプラス思考で
スケールの大きな仕事をしてほしい。
それには朝鮮人であるというプライドが必要です。
別に本名でも通名でもいい。
朝鮮人であることを認めてこそ、
本当の能力が発揮できるのでは。
いい例がソフトバンクの孫正義。
そして、考える力をつけるためにも
本をたくさん読んでください(笑)」
〔画像〕p24【Sai = 사이 = サイ 23】1997-06
https://dl.ndl.go.jp/pid/1854214/1/24
季刊Sai 1997年夏第23号
発行日 1997年6月1日
発行人 鄭 早 苗
編 集 『季刊Sai』編集委員会
鄭早苗・井上正一・山本冬彦・金敦子
写植・印刷 大信写植印刷株式会社
発 行 KMJ(在日コリアン・マイノリティ)研究センター
事務所
〒530 大阪市北区天満2-15-19 浅利ビル2F
TEL 06-882-6688 FAX 06-882-6676
次号(第24号)発売日 1997年9月1日
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